図1 非圧縮ハイビジョン映像多重無線伝送技術のイメージ
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図2 5.8 km伝送実験の模様
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 NTT(持ち株会社)と日本放送協会(NHK)、フジテレビジョンは2010年4月5日、120GHz帯ミリ波無線伝送技術とデータ伝送速度10Gb/s級の誤り訂正符号化技術とを組み合わせて、非圧縮のハイビジョン信号(HD-SDI信号)の6チャンネル多重伝送実験を行い、これまでで最長となる 5.8km(晴天時)の距離を無線伝送することに成功したと発表した。

 非圧縮ハイビジョン信号(伝送速度:1.5Gb/s)を複数チャンネルまとめて伝送するには、数Gb/s以上(1.5Gbps×チャンネル数)の伝送容量が必要となるため、現在放送局で広く使用されているマイクロ波帯の映像素材伝送装置(FPU)では対応できない。NTT、NHKおよびフジテレビでは非圧縮のハイビジョン信号を複数チャンネル分、伝送させる新たな技術として、2006年度から共同で120GHz帯ミリ波無線を使用した非圧縮ハイビジョン映像多重無線伝送技術の研究開発に取り組んでいる(図1)。

 今回の伝送実験を実施するにあたり、NTTは送信出力を従来に比べて2倍の40mWに増加した新たな120GHz帯無線装置を開発した。NHKは120GHz帯無線伝送用に高速で動作する誤り訂正符号化方式を開発した。フジテレビはお台場地区周辺での各種の条件での予備実験を実施した。その結果、5.8km(フジテレビ湾岸スタジオ‐東京ヘリポート間)での6チャンネルをまとめた非圧縮ハイビジョン信号および10Gb/sデータのエラーフリー伝送に成功した(図2)。なお、今回の開発技術を回線マージンとして利用すると、計算上は20mm/h程度の降雨で約2kmの無線伝送が可能となることから、降雨時も含めた屋外でのスポーツ中継への適用が視野に入ってきたとする。

 NTTなどは今回の技術開発の一部を、総務省による委託研究開発の一環として行っており、5kmを超える伝送を最終目標としていた。NTTとNHK、フジテレビは今回の伝送実験の成功を踏まえ、「多彩で魅力的な番組作りの実現に向けて、引き続き120GHz帯ミリ波無線伝送システムの研究開発を行っていく」としている。

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