写真●KDDIの古賀靖広 渉外・広報本部渉外部長
写真●KDDIの古賀靖広 渉外・広報本部渉外部長
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 KDDIは2010年3月31日,携帯電話のSIMカードを別の事業者の端末で利用できなくする機構「SIMロック」についての説明会を開催した。総務省が4月2日に開催するSIMロックの公開ヒアリングを前に,同社の立場を明らかにした格好である。現状の端末では,複数の通信方式が存在し,SIMカードを入れ替えても通信できないことから,SIMロック解除に反対の意向を示した。その一方で,将来的にSIMロックフリー化された端末が登場し,ユーザーの支持を受けた場合は,柔軟に対応する方向性を示した。

 SIMロックを解除できるようになれば,ユーザーは購入した端末を買い換えることなく,利用する携帯電話事業者を自由に変更できる。しかし,現在の携帯電話は特定事業者に特化した設計となっているものが大半で互換性がなく,これらの端末をSIMロックフリー化したとしてもユーザーはメリットを享受できないという。

 第3世代携帯電話(3G)通信方式については,NTTドコモとソフトバンクがW-CDMA,KDDIがCDMA2000方式を採用している。このことから,「KDDIの端末では他社と通信方式に互換性がなく,SIMロック以前の問題として入れ替えはできない」(古賀靖広渉外・広報本部渉外部長、写真)として,KDDIの端末でSIMロック解除をすることは意味がないと主張する。

 NTTドコモやソフトバンクがW-CDMA同士でSIMカードを差し替えできるようにした場合でも問題があるという。音声やSMS(short message service)は3GPP(3rd Generation Partnership Project)方式て統一されているため共用できるが,メール/Web表示/アプリ互換性はないという。

 次世代通信方式LTE(long term evolution)の時代には,通信の仕様を統一化されてSIMロックを解除するメリットが高まるといわれているが,「LTEでデータ通信は共通化できたとしても,各事業者は音声通信に3G方式を利用すると見られている。そのためSIMカードを差し替えても電話が使えない可能性がある」(古賀部長)という問題がある。

 今後は事業者の枠を超えて,あらゆる通信環境に対応できる端末が登場する可能性もある。「そうした端末が登場するかはメーカー次第」(古賀部長)であるが,iPhoneやキンドルのような、メーカー主導で独自プラットフォームとアプリケーション・サービスを提供する端末がSIMロックフリー化し,多くのユーザーの支持を得る可能性もある。その際には,「それら端末のメリットをユーザーが享受できるようにしたい」(古賀部長)として,通信サービスの提供を検討する方向性を示した。