情報処理推進機構(IPA)のソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)は2010年3月30日、アジャイル開発に適したシステムの分野や規模などを整理した「非ウォーターフォール型開発に関する調査報告書」を公開した。SECがアジャイル開発に関する調査報告をまとめるのは初めて。

 アジャイル開発は要求仕様の変化を柔軟に取り込みやすい開発手法だ。設計からテストまでを短い期間(イテレーション)で実施して、実際に動作確認できるシステムを構築する。このイテレーションを繰り返すことでシステム全体を開発する。

 調査報告書は153ページに渡り、これまでにない角度で国内のアジャイル開発を分析している。例えば、アジャイル開発を適用しやすいかどうかを評価する軸として、「不確実性」「複雑性」「高速適応性」の三つを提示した。併せてアジャイル開発手法が提示する原則や進め方を洗い出し、ISOが規定する六つの品質特性やPMBOKが定める九つの知識エリアに照らし合わせている。例えばPMBOKの知識エリアついては、外注管理を除いた八つの知識エリアを、アジャイル開発がカバーしていることを明らかにした。

 報告書の後半では、「成功の鍵は顧客がアジャイル開発を理解すること」と今後に向けて提言を出した。同時に、現状では「発注者の役割や完成責任の位置づけなどに言及がない」といったアジャイル開発に適した契約形態に課題があることも明確にした。

 調査報告書をまとめた研究会は昨年11月から今年3月にかけて、計5回の会合を重ねた。参加メンバーは京都高度技術研究所の松本吉弘顧問を座長に12人が参加した。研究会への参加団体はディー・エヌ・エー、富士通、楽天、豆蔵、永和システムマネジメント、NEC、サイバー大学、日立製作所、武蔵大学、新日鉄ソリューションズ。SECは4月から始まる新年度で研究会を部会に昇格し、評価軸のブラッシュアップやアジャイル専門の契約書策定などを進める。