東京都議会は2010年3月18日、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の改正案について検討する総務委員会を開催した。改正案の一つの柱は、青少年の携帯電話におけるインターネット利用環境の整備である。具体的には、「携帯電話機の都推奨制度の創設」「フィルタリングの実効性の確保」「フィルタリング解除手続きの厳格化」「青少年のインターネット利用に関する保護者、都の責務」「青少年や保護者に対する効果的な啓発」で構成している。今回は委員会に所属する都議会議員からの質問に対して、東京都 青少年・治安対策本部の担当者が答えた。
この改正案については、法律家やインターネット関連の業界団体、事業者などからあいまいな記述が多いという指摘が多数行われている。例えば「携帯電話機の都推奨制度の創設」については、改正案に推奨基準の具体的な内容に関する記載がない。また「フィルタリングの実効性の確保」は誰が対象なのか、実効性の確保を指すものは何かの基準はない。「フィルタリング解除手続きの厳格化」は、携帯電話サイトのアクセスを制限するフィルタリング機能を解除する場合に解除の正当な理由やその他の事項を記載した書面を提出するとしているが、誰が対象なのか、正当な理由が何を指すのか、その他記載する事項は何なのかが書かれていない、といったものだ。これらの点に関して民主党の小山くにひこ委員から、「基準の明示がない規制は過度な規制につながる可能性がある。基準について答えてほしい」として東京都に質問がなされた。
まず「携帯電話機の都推奨制度の創設」について東京都の回答は「基準はまだ決まっていない。制度は2010年10月に施行するので、それに間に合うように作る」とした。「フィルタリングの実効性の確保」については、「対象は事業者であるが、内容は事業者の自主規制なので例示はできない」とした。「フィルタリング解除手続きの厳格化」は、対象は保護者で、正当な理由の例には青少年が就労した、心身に障害がありフィルタリングがあると生活に支障が出る、などを挙げた。
公明党の小林健二委員は、「『青少年がインターネットを利用して違法や有害な行為をしたり、犯罪や被害を誘発したりする場合は、東京都が保護者に対して指導または助言をする』とあるが、過剰な介入ではないのか」と質問した。これに対して東京都は、「東京都の教育庁の調査では、青少年が被害にあったと回答した割合と、保護者が相談を受けた割合を比べると、後者の方が低い。保護・監督が不十分な保護者が多いのではないか。待つだけではだめで、サイトにいじめの書き込みがあった場合は削除方法など適切な助言が必要だ」とした。
質疑の中で自民党および公明党に所属する委員は賛成、民主党および共産党の委員は反対の立場をそれぞれ表明していた。総務委員会では2010年3月19日に再び開催し、改正案に対する決議を行う予定である。