写真1●Microsoft開発部門担当副社長のScott Guthrie氏
写真1●Microsoft開発部門担当副社長のScott Guthrie氏
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 米国ラスベガスで開催している米Microsoftの技術カンファレンス「MIX10」。2日目である2010年3月16日(米国時間)キーノートの後半では、前日に続き開発部門を担当する副社長のScott Guthrie氏が登壇し、Webプラットフォームを対象とした同社の最新開発環境を披露した(写真1)。

 Guthrie氏は、Webプラットフォームの開発環境として4月に発売するVisual Studio 2010のASP.NET 4を紹介した。まず、IntelliSense機能の効率が大幅に向上している点を指摘。IntelliSenseとは、コードの一部を入力した段階で、該当する候補を自動的に一覧表示してくれる機能である。

 開発者にとっては入力の手間が減るだけでなく、スペルミスといった誤入力の可能性を減らせるメリットがある。このIntelliSense機能を、AjaxやjQueryといったWebプラットフォームの開発によく使われるライブラリについて大幅にブラッシュアップした。

 たとえば、HttpCachePolicyという関数名を入力する場合、これまでは前方一致でHTTPと入力したのみ表示していた。これを「Cache」といった途中のキーワード、あるいは「HCP」といった略称を入力しても候補として表示するようにした(写真2)。その結果、Visual Studio 2010のIntelliSense機能は、前バージョンVisual Studio 2008と比べて1.4~6倍効率的になっているとした(写真3)。

写真2●前方一致以外の文字でも候補関数を表示するようになった
写真2●前方一致以外の文字でも候補関数を表示するようになった
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写真3●Visual Studio 2010ではIntelliSense機能で生産性向上を図っている
写真3●Visual Studio 2010ではIntelliSense機能で生産性向上を図っている
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 Visual Studio 2010では、開発したソフトを配布する機能も強化した。「Debug」「Release」「Staging」の3つのステージごとに設定を分けられるようにした。これにより、データベースの設定などをWebconfigで各ステージごとに切り替えてソフトを配布できる。

オープンソースjQueryを標準ライブラリに格上げ

 今回のキーノートでGuthrie氏は、今後Ajaxアプリケーションを開発する際には、オープンソースのJavaScriptライブラリである「jQuery」を使うことを推奨した。jQueryを今後、Microsoft標準の.NETクラス・ライブラリとほぼ同等に取り扱ってサポートしていく方針を語った。

 具体的には、前述したようにIntelliSense機能を充実させるのに加え、各種のマイクロソフト技術と組み合わせて利用できるようにしていくという。加えて、PHPやRuby on Railsといった他の開発環境と組み合わせてjQueryを使えるようにしていく意向も明らかにした。jQueryはマイクロソフトの標準ライブラリとなったと考えていいだろう。

 Guthrie氏はもう1点、データを取り扱う際のAPIとして「OData(Open Data Protocol)」の利用を推奨していく方針を明らかにした。ODataとは、Web上でデータを検索したり更新したりするためのプロトコルである。GoogleはGDataというほぼ同様のAPIを開発・推奨している。これに対し、MicrosoftはODataの普及を推進している。

写真4●ODataに対応済または今後対応予定の製品
写真4●ODataに対応済または今後対応予定の製品
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 今回のキーノートでは、ODataを使ってWebAPIサービスを公開するWCF(Windows Communication Foundation)アプリを作れば、簡単にWindows Azure環境に移行できることを示し、ODataのメリットを強調した。現在のSharePoint 2010やExcelのPowerPivotだけでなく、Windows Azure、SQL Azure、SQL Serverといったそれ以外のマイクロソフト製品、さらにはPHPやIBMのWebSphereなどでも順次ODataが利用できるように広がっていくという(写真4)。