写真1●IE担当のゼネラル・マネージャDean Hachamovitch氏
写真1●IE担当のゼネラル・マネージャDean Hachamovitch氏
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写真2●JavaScriptを実行するベンチマーク結果ではIE8に比べ6倍以上改善している
写真2●JavaScriptを実行するベンチマーク結果ではIE8に比べ6倍以上改善している
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写真3●Webブラウザの標準への準拠度を調べるAcid3では55点
写真3●Webブラウザの標準への準拠度を調べるAcid3では55点
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 米Microsoftは2010年3月16日(米国時間)、米国ラスベガスで開催しているMIX10の2日目のキーノートで、同社が開発を進めているInternet Explorer(IE)の次期バージョンIE9について概要を発表した。同日からプレビュー版の公開も開始した(該当サイト)。

 キーノートに登壇したIE担当のゼネラル・マネージャであるDean Hachamovitch氏(写真1)がIE9の特徴として挙げたのは、高速化とHTML5などの標準への対応である。

 聴衆に向かってHachamovitch氏はまず、IE9ではパフォーマンスの改善を図っていることをアピールした。特にJavaScriptの実行性能を改善しているとして、Sun Spiderを使ったベンチマークの結果を公表。それによると、IE8に比べ6倍以上高速に処理できるようになったとしている(写真2)。パフォーマンスが改善した理由として、Hachamovitch氏はIE9で処理エンジンの設計を変えたことを挙げる。具体的には、処理エンジンを複数搭載するマルチコア構成の新しい処理エンジン(コード名「Chakra」)を搭載することで、IE9では描画をしながらバックエンドでJavaScriptをコンパイルするといった並列処理を実現するという。

 Hachamovitch氏が次に挙げたのは、HTML5、DOM、CSS3、SVGといったWeb標準への準拠である。これらの標準に準拠する意味として「異なるWebブラウザでも同じHTML、同じスクリプト、同じマークアップが同じように取り扱えることが重要」とHachamovitch氏は強調した。そのためにIE9では標準に積極的に対応するようにしており、標準への準拠度を調べるAcid3のテスト結果でも当初は32点だったが、現在は55点まで上がってきているという(写真3)。そして、今後も標準への準拠度を高めるように改善していくとした。

HTML5の処理にGPUを活用

 HTML5への対応についても、IE9には大きな特徴があることがキーノートでは明らかになった。HTML5では、2Dのグラフィック、音声、ビデオを取り扱うためのタグが追加され、こうしたマルチメディアの利用が増えることが予測される。そこで、IE9ではHTML5の処理にハードウエアのGPU(Graphics Processing Unit)を活用することにした。つまり、IE9ではWindowsを介してPCハードウエアを操作することで処理性能が大幅に改善される。

写真4●他のブラウザを並べて同じコードを実行しIE9のほうが高速なことを見せた
写真4●他のブラウザを並べて同じコードを実行しIE9のほうが高速なことを見せた
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 キーノートでは、IE9とGoogle ChromeやFirefoxそれぞれの画面を並べて、同じHTMLコードを実行させてみて、そのスピードの違いを観客にアピールした。例えば、3Dの3次元空間の中を移動するような画像処理や(写真4)、透明度を設定したボールを自由落下させるようなシミュレーション、文字をレンダリングした際の輪郭の処理などを比較し、IE9の方が高速でなめらかに動くことを見せた。

 圧巻だったのは、見せたビデオの再生処理での比較だ。Hachamovitch氏は最後に、Flashなどを使わずに、HTML5で直接ビデオを扱うように記述した場合のパフォーマンスについてIE9とChromeで並べて見せた。すると、IE9では2つのHDビデオ(720p、4Mバイト/秒)を同時に再生してもスムーズに表示したのに対し、Chromeでは1つのHDビデオを再生するだけでもコマ落ちした状態になってしまい、GPUを利用することによるメリットが歴然と現れた。

動画●右のChromeと比べて左のIE9のほうが同じコードを実行しても高速なことを見せた