図1 シミュレーション検討の結果
図1 シミュレーション検討の結果
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 VHF-LOW帯マルチメディア放送推進協議会(VL-P)は2010年3月16日、総会および全体連絡会を開催した。総会では、2010年度の事業計画の審議を行い、今後もVHF-LOW帯を利用したマルチメディア放送の実現を目指して、事業者運用規定の策定に向けた作業を進めていくことなどを確認した。2010年度は会費を徴収せず会の運営を図ることもあわせて承認した。

 連絡会では、総務省が実施した「無線設備規則の一部を改正する省令案等の電波監理審議会への諮問及び当該省令案その他の携帯端末向けマルチメディア放送の実現に向けた制度整備案に対する意見募集」に対してVL-Pが提出した意見の内容も公表された。

 今回諮問されたのは、VHF-HIGH帯を利用する全国向けマルチメディア放送の実現に向けた制度整備案であり、VHF-LOW帯に関する事項はこれに含まれていない。そこで、VL-Pは、VHF-LOW帯が今回の諮問に含まれなかった理由と、今後のスケジュールについて明確にするように意見を提出した。

 またVHF-HIGH帯を利用するマルチメディア放送の放送方式について、ワンセグを含む地上デジタル放送やVHF-HIGH帯やVHF-LOW帯のマルチメディア放送をより安価な共用受信機で受信できることが望ましいなどの理由から、「これらと親和性を図った方式が望ましい」という意見も一緒に表明した。

 連絡会では続いて、各作業班から活動状況の報告も行われた。

<置局検討作業班>
 事業者運用規定の策定作業に必要な各地域ブロックで実施可能な帯域幅(セグメント数)を求めるために、作業班の下にシミュレーション作業TGを設置、全国を7ブロックに分けて地域ごとに仮想の送信点を想定し、SFNなど送信ネットワークについての検討を行った。特に今回は、ガードインターバル(GI)長126マイクロ秒に加えて252マイクロ秒のケースについてもシュミレーションを行い、チャンネル割り当て案を作成した。
 その結果、最大9セグメント(GI長が126マイクロ秒)から12セグメント(同252マイクロ秒)の可能性があり、情報レートとしては約3.7Mbps~4.5mbpsに相当すると報告した(図1)。なお、これは全ブロック均等を想定した結果である。また、7ブロックに分けるという案に対しては、内藤正光総務副大臣が、自ら主催する総務省の「ラジオと地域情報メディアの今後に関する研究会」において、懐疑的な見方を示している。

<サービス検討作業班>
 機能要件のなかで、サービス面でのさらに詳細な検討が必要な三つの課題「有料放送」「独自放送」「権利処理」について、サブワーキンググループを設置し検討を進めている。有料放送サブワーキングでは、有料放送方式に関して広く一般から情報収集するためのRFI(Request For Information)を実施した。元々9社/団体から7件の技術情報が寄せられていたが、追加募集の結果新たに2件の技術情報の提供があったことが報告された。
 独自放送サブワーキングでは、独自放送の定義について整理した。権利処理サブワーキングでは、VL-Pの権利処理に対する方向性を整理し、いくつかの権利者団体へのヒアリングを行った。

<運用規定策定作業班>
 運用規定策定作業は、リアルタイム放送サービスについては、「ワンセグ」との互換性を基本としながら、画質・音質の更なる向上のために機能強化を図るなどの基本的方向性を定めた後に、詳細検討及びドラフティング作業を進めている。

 この中で、最近の話題として縦画面と横画面の使い分けを挙げた。ワンセグでは、縦型の表示をベースになっているが、マルチメディア放送としては横長表示時でもデータ放送やインタラクティブな要素を取り込めるか、について様々な意見が出ているという。

 ダウンロードおよびIP伝送については、それぞれサブワーキンググループを設置し、技術要件の整理・課題抽出を進めている。また、電波産業会(ARIB)におけるモバイルマルチメディア放送の標準規格策定作業を受けて、標準規格への提案事項の整理作業を行っている。

 なおARIBにおける作業は、ISDB-Tsb(VHF-LOW帯の規格)とISDB-Tmm(二つあるVHF-HIGH帯向け規格の一つ)が同じ一つの作業班で検討が進められている。この中で、ダウンロード仕様について、ISDB-TmmはIPを使う仕様のみが想定されているが、ISDB-TsbはカルーセルとIPの両方が利用できる。そこで、最近の話題として、カルーセルとIPの二つの仕様がある理由や使い分けの考え方を整理していることが紹介された。

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