近畿日本鉄道とJVC・ケンウッド・ホールディングスが2010年3月12日、09年3月期決算の内部統制報告書について「重要な欠陥」があると訂正した。2月末に出そろった11月期決算企業の内部統制報告書では3社が「重要な欠陥」を開示、3月期決算企業1社が訂正内部統制報告書を提出した。

 内部統制報告書はJ-SOX(日本版SOX法)で提出を義務付けているもの。近鉄とJVCケンウッドは3月12日に発表した決算訂正を受け、訂正内部統制報告書を提出した。両社は09年6月に提出した内部統制報告書で「財務報告にかかる内部統制は有効である」と報告していた。

 近鉄は同社の連結子会社の不正行為を原因に、05年3月期から10年3月期第2四半期までの連結決算を訂正した。これを受けて近鉄は不正があった子会社について「全社的な内部統制において、取締役による経営者監視機能ならびに監査役および内部監査部門の監査機能が不足していたこと、コンプライアンスの徹底が不十分であったこと」といった不備が重要な欠陥に当たると訂正。加えて近鉄の「グループ会社管理体制の一部に不備があったこと」も不正行為の理由になったとしている。

 09年11月に近鉄の連結子会社である近鉄ビルサービスで業務上横領が判明。グループ企業の内部監査を実施した結果、広告業を主業務とする子会社メディアートで、実体のない取引の計上といった不適切な経理処理が判明した。メディアートの不適切な会計処理は、同社の前社長の主導により行われたという。

 JVCケンウッドも3月12日に、05年3月期以降の連結決算を訂正した。連結子会社の日本ビクターで不適切な会計処理があったことが原因だ。JVCケンウッドは不適切な会計処理を防止できなかったことを「重要な欠陥」に該当すると判断、訂正内部統制報告書で「内部統制は有効でない」と結論を表明した。ビクターとケンウッドは08年10月に統合している。

 決算訂正の原因は、日本ビクターの欧州子会社で販売促進費などの営業関係経費の先延ばしやリスクの認識不足などが発生したため。内部統制が有効に機能しなかった理由として、訂正内部統制報告書で「ビクターとその子会社には独自の習慣、組織構造が認められるため、別途の評価範囲として内部統制を評価していた」との趣旨を記述している。

 08年10月の統合後も「これまでのやり方を継続し、業務分掌に関して事業の効率性は意識されているものの、内部けん制や業務の健全性を確保する配慮が不十分であったこと」や「企業行動基準や社内通報規定などは設定されていたものの特に海外子会社に対して十分機能していなかったこと」、「内部監査は主に経理部が実施し独立した内部監査機能がなかったこと」といった重要な欠陥が残ったとしている。

11月期決算で重要な欠陥を報告した企業は3社、訂正報告書は1社

 11月期決算企業で「重要な欠陥」を報告したのはアサヒ衛陶、オプトエレクトロニクス、くろがね工作所の3社である。

 衛生機器を製造するアサヒ衛陶と自動認識装置製造のオプトエレクトロニクスは、監査人による指摘を受け決算の修正を実施した。アサヒ衛陶は「相互チェックが十分機能しなかったことにより、誤りを発見するための仕組みが十分でなかったため」との趣旨を原因として挙げている。

 オプトエレクトロニクスは「米国の連結子会社において経理・財務の経験や知識を有する担当者を決算業務に従事させることができなかった」ことに加え、自社の担当者も「中国への生産拠点移管に伴う特定の担当者への業務集中により、各部署の人員が決算関連業務に十分な時間がとれなかったため」との趣旨を説明している。

 オフィス家具のくろがね工作所はファシリティ環境事業本部における不適切な会計処理が09年6月に発覚し、決算修正を実施した。「特に販売業務プロセスにおいて需要な欠陥があった」と評価したという。同社は「重要な欠陥」の原因の一つとして、「現行のITでは、当社の販売環境の変化に対応できておらず、システム改善が図れていなかった」としている。

 アルミダイカスト事業や食品流通事業を傘下に持つ3月期決算企業の東理ホールディングスは、訂正内部統制報告書を提出。持ち株会社化した05年3月期以降の決算を訂正した。過去に実施した第三者割当増資に関するコンサルティング費用の支払いについて、注記漏れがあったとしている。

 10年3月12日までにJ-SOX初年度として重要な欠陥を開示した企業は、累計87社(「不備があり、内部統制は有効でない」と開示した1社を含めると88社)となった。3月12日までに内部統制報告書を提出した企業は累計3203社で、重要な欠陥を開示した企業の割合は約2.7%となる。評価手続きが終わらないといった理由で監査意見が不表明になった企業は11月期決算企業にはなく、累計11社のままである。

■変更履歴
公開当初、本文4段落目のメディアートの社名が間違っていました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2010/3/16 14:50]