NECは2010年2月25日、遠藤信博取締役 執行役員常務(56)を4月1日付で代表取締役 執行役員社長へ昇格させる人事を発表した。会見には、新社長になる遠藤信博氏と同日付で代表取締役会長に退く矢野薫氏(66)が出席した。会見での一問一答は以下の通り。
人選の理由は。
矢野氏:中期経営計画を着実に実行できる人物であるという判断からだ。遠藤氏のこれまでの経験を高く評価しており、グローバル化を一層促進できる人物と考えている。
社長に遠藤氏を選ぶまでの経緯は。
矢野氏:「サクセッション・プラン」に基づいて決めた。サクセッション・プランとは、後継者育成計画のことであり、毎年改訂を加えている。このサクセッション・プランをたたき台に、私と社外取締役で協議し、次期社長候補を数名に絞った。その後、私が次期社長候補を遠藤氏に絞り込んで取締役会に諮り、承認を受けた。
いつ社長就任の打診を受けたのか。
遠藤氏:2月中旬の週末、社長室に呼ばれ、打診を受けた。矢野社長からは「NECをV字回復に導くためには、世代交代が必要だ」との説明を受けた。
社長職は名誉であると同時に重責であるため、その場で即答することはできなかった。休日、じっくりと考え、月曜日に受諾の旨を矢野社長に伝えた。
遠藤次期社長の座右の銘は。
遠藤氏:「傾聴」だ。NEC社内のリーダー研修で、韓国サムスングループ第二代会長の李健熙(イゴンヒ)氏の足跡から感銘を受け、傾聴を座右の銘とした。
傾聴の姿勢は心の柔らかさにつながる。常に「耳を開く」という姿勢を保つようにし、組織のちょっとした変化も見逃さないようにしている。
心に残っている仕事は。
遠藤氏:超小型マイクロ波通信システム「パソリンク」の再生だ。私が2003年にモバイルワイヤレス事業部長に就任した時、パソリンクは赤字だった。
私は黒字転換のためには、顧客の信頼を得ることが最重要と考えていた。そこで、パソリンクの営業担当者に「月に2回は同じ顧客のもとに通ってくれ」と頼んだ。契約書にサインをする際に思い浮かぶのは、NECのロゴではなく営業担当者の顔であると考えたためだ。
結果的としてインド案件を受注でき、パソリンクを軌道に乗せることができた。
中期経営計画に明記した2012年度の数値目標は必達と考えるか。
遠藤氏:非常に重い数値だと考えている。「NECグループビジョン2017」を達成するためにも、中期経営計画の達成は必達だ。
今後、注力していく領域は。
遠藤氏:クラウド事業と海外展開だ。クラウド事業に関しては、「クラウドに賭ける」という意気込みで取り組む。ITとネットワークの融合を軸に事業展開を加速させていく。
海外展開に関しては、国内市場が厳しい現状で海外事業の拡大は不可避だ。中期経営計画にも明記したが、海外売上高比率を現在の16%(NECエレクトロニクス分を除いた数字)から2012年度には25%に高める。特に、中華圏やアジア太平洋地域といった新興国でのビジネス拡大を目指す。
グループ会社の再編については。
遠藤氏:相乗効果が薄いと判断すれば、積極的にグループから切り離していく。逆にクラウド事業などでの相乗効果が高い会社については、積極的にM&Aを仕掛けグループに取り込み、成長の牽引力にしたいと考えている。