政府の知的財産戦略本部 コンテンツ強化専門調査会は2010年2月24日に第2回会合を開催した。今回の会合では、「コンテンツの海外展開」と「クリエーター育成」の強化に向けた議論を行った。

 コンテンツの海外展開については、日本には良質なコンテンツがあるにもかかわらず、それが十分に活用されていない現状を指摘する意見が出た。デジタルハリウッド大学学長の杉山知之氏は、「『鉄腕アトム』は手塚治虫先生の代表的な漫画だが、この作品の映画化が海外で行われた。なぜこのような代表的な作品の映画を国内で作って、海外に発信することができないか」と疑問を投げかけた。

 一方で、日本が海外のコンテンツ市場で収益を上げるための手段については、日本と海外で映画の制作費の規模に差がある現状を踏まえて、「日本企業はハリウッド映画に出資すべきではないか。1割の出資であってもその作品がヒットすれば資金を回収できる」と角川グループホールディングス 代表取締役兼CEOの角川歴彦氏が述べた。角川氏は、海外のコンテンツ市場で稼ぐための方法に関して、「色々なケースを考えていただきたい。そのうえで日本の海外収入の目標額が設定されるのであれば、非常に建設的だと思う」と持論を展開した。

 このほかに、「我々の作品の権利が欲しいがためにアプローチしてくる海外企業もある。作品の権利を生かす形で収益を取り込むスタイルもあり得るのではないか」(日活 代表取締役の佐藤直樹氏)、「海外市場で稼ぐのであればそのための方法論を明確にすべきだ」(ソニー・コンピュータエンタテインメント 名誉会長の久夛良木健氏)などの意見も出た。

 クリエーター育成に関しては、コンテンツ制作の機会を増やすことが重要とする意見が複数の委員から出た。ドワンゴ 代表取締役会長の川上量生氏は、日本のゲーム業界を例に出して、「プロデューサーなど権力を持っている人がストーリーを作っており、現場の人間にチャンスが与えられない。多くのコンテンツを作る機会を与えることが望ましい」と述べた。フジテレビジョン 執行役員デジタルコンテンツ局長の大多亮氏は、「プロデューサーやディレクターは数を作らないとコツをつかめない」とした。さらに「それを見てもらう場も必要」として、イベントなどクリエーターが作品を出展する機会を増やすべきという見方を示した。