写真1●電子版開始を発表する日本経済新聞社の喜多恒雄代表取締役社長
写真1●電子版開始を発表する日本経済新聞社の喜多恒雄代表取締役社長
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写真2●会場で示された日経新聞「Web刊」のデモ。過去の経緯などの記事を一緒に読める
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 日本経済新聞社は2010年2月24日午後に記者会見を開き、3月23日からパソコンと携帯電話で読める有料の「日本経済新聞 電子版」(通称Web刊)を発行すると発表した。3月1日から登録を受け付ける。

 喜多恒雄代表取締役社長(写真)は「本格的な電子版の提供は日本の新聞で初めて。(要望があれば)この仕組みを同業他社にも提供していきたい」と話した。

 電子版の購読料も明らかにした。日経新聞定期購読者は月額1000円(税込み)で、紙の新聞との総額が月額5383円になる(朝・夕刊セット版地域の場合)。決済方法は、クレジットカードに限定。新聞販売店での支払い方法にかかわらず、Webサイトで、クレジットカード番号とともに会員登録する。電子版のみの会員の購読料は4000円(税込み)に設定。「購読料は、現在の紙の新聞販売に影響を与えない価格体系を模索した」(喜多社長)という。

 電子版は既存のニュースサイト「NIKKEI NET(日経ネット)」を継承・発展させたものになる(同社のサイトから画面イメージをダウンロードできる)。

 電子版の読者は、「購読者(有料会員)」、会員登録だけをする「登録読者(登録会員)」、それ以外の「一般読者」の3つに分かれる。購読者(有料会員)は、24時間随時記事を更新する「日経新聞Web刊」の記事を読めるのに加えて、過去記事のデータベースである「日経テレコン」の記事を25本まで追加料金なしで読める。さらに、日経新聞の全誌面イメージを、朝刊は毎日4時、夕刊は毎日15時30分に世界中どこからでも見られるほか、「マネー」「テクノロジー」「ライフ」などの各分野で日経グループ各社が供給する電子版独自のコンテンツも読める。

 会員獲得や収益の見通しについて、岡田直敏取締役電子新聞担当は「黒字化時期の目標は設定していない。いつまでに何人という目標も掲げない。うまく行かなければやめるということではなく、じっくり育てようと考えている。ただ目安として、日経新聞の購読部数約300万部の1割に当たる30万人の電子版購読者を、できるだけ早めに獲得したい」とした。

 既存サイトのNIKKEI NETとの関係について、岡田取締役は「NIKKEI NETは広告収入で成り立っているが、2009年は伸び悩んだ。電子版では、会員の属性やどんな記事を読んでいるかを踏まえて広告を出せるようになる。それによって、広告収入は伸びるはずだ」と話した。

新端末への配信は「研究中」

 サービス開始時は、電子版を閲覧できるのはインターネットに接続できるパソコン・携帯電話に限定する。岡田取締役は「様々なメーカーから電子新聞用端末の提案をいただいているが、それぞれ計画・技術仕様が異なる。我々のビジネスモデルと矛盾しないものがどれなのかを研究しているところだ」と説明した。

 会場では同業である新聞社・出版社の記者から質問が相次いだ。あるビジネス誌の記者の「紙の新聞と電子版が併存するというが、電子版ですべての記事が読めるのだから、電子版に一気にシフトするのではないか」という質問に対しては、喜多社長は「紙には読みやすさ、持ち運びやすさというメリットがある。紙と電子版は共存共栄できる。ただし、コンテンツが良くなければ魅力がなくなるというのは、紙でも電子版でも同じ」と答えた。