松江オープンソース活用ビジネスプランコンテスト2010最終審査会(写真提供:しまねOSS協議会)
松江オープンソース活用ビジネスプランコンテスト2010最終審査会(写真提供:しまねOSS協議会)
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 「松江オープンソース活用ビジネスプランコンテスト」の最終審査会が、2010年2月19日開催された。ビジネス活用部門の最優秀賞に「日本酒をにぎわす会」の「日本酒ポジショニングマップ(SAKEポジ)」,学生部門の最優秀賞に松江高専の川上茜氏と福間加菜氏による「当直ドクターなび ~時間外救急医療お助けシステム~」が選ばれた。

 松江オープンソース活用ビジネスプランコンテストは,松江市や,島根県の産官学による団体「しまねOSS協議会」などからの代表者により構成されている実行委員会が開催している。松江市は,同市に在住するまつもとゆきひろ氏が開発したオープンソースのプログラミング言語「Ruby」による産業振興を図る「Ruby City Matsue」プロジェクトを推進している。このことから、オープンソース・ビジネスの可能性に光を当てることを目的としてコンテストを開催している。2009年に第1回が開催され、今年が2回めとなる。

 募集は一般を対象にした「ビジネス活用部門」と,学生を対象にした「学生部門」に分けて行われ,ビジネス活用部門へは8件,学生部門へは17件の応募が寄せられた。この中から各部門4件が最終審査会でプレゼンテーションを行った。

日本酒で人と人をつなぐ

ビジネス活用部門の最優秀賞に選ばれた「日本酒ポジショニングマップ(SAKEポジ)」のプレゼンテーション
ビジネス活用部門の最優秀賞に選ばれた「日本酒ポジショニングマップ(SAKEポジ)」のプレゼンテーション
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 ビジネス活用部門で最優秀賞に選ばれた「日本酒をにぎわす会」の「日本酒ポジショニングマップ(SAKEポジ)」は,日本酒の味をユーザーがポジショニングして、共有できるサービス。Webサイトをオープンソース・ソフトウエアを活用することで低コストで構築、蔵元などの協賛で運営することを想定している。

 同会の江角淳子氏は「利き酒師」の資格も持つ。「日本の伝統文化であり、地域の特産品、そして何よりも人と人をつなぐこの日本酒をもっと盛り上げたい」(江角氏)との思いから会を設立し、SAKEポジを考案したという。

 SAKEポジでは、日本酒を「超淡麗」から「超濃酵」までの味わいと、「爽やか」から「ふくよか」までの香りの2次元マップ上にポジショニング。他のユーザーが同じ銘柄をどうポジショニングしたのかを見ることができる機能や、評価済みの銘柄の蔵元を日本地図上に表示できる機能などのアイディアも披露した。

 ビジネス活用部門ではこのほか、優秀賞と奨励賞が選ばれた。優秀賞を獲得した杉原健司氏の「日本酒(地酒)・地域食材のマッチング/レコメンドビジネス」は、地酒に合う食材を推薦するWebサイトで地域の名産物を紹介するもの。

 奨励賞に選ばれた高田良佳氏の「ご当地カーディアン」は、観光客に観光地の指定場所をめぐってもらうもの。携帯電話の位置情報サービスを利用したスタンプラリー・サービスを提供し、その景品としてトレーディングカードを提供する。一部の有名な観光スポットだけでなく様々な場所を訪問してもらうことで観光地を活性化。店舗などの協賛金で運営する。

 奨励賞となった澤田要氏と三浦豊氏の「オープンソースソフトウェアの活用による年間1千万台の廃棄PCのリユース促進」は、中古パソコンにLinuxを導入して再生し、サポートとともに低額の月額料金で提供するプラン。澤田氏は特定非営利活動法人オープンソースソフトウェア・シティの理事長で、54歳と今回の審査会参加者中最高齢である。

家族の実体験から発想した「当直ドクターなび」

学生部門の最優秀賞「当直ドクターなび ~時間外救急医療お助けシステム~」を提案した松江工業高専 情報工学科 川上茜氏と福間加菜氏(写真提供:しまねOSS協議会)
学生部門の最優秀賞「当直ドクターなび ~時間外救急医療お助けシステム~」を提案した松江工業高専 情報工学科 川上茜氏と福間加菜氏(写真提供:しまねOSS協議会)
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 学生部門の最優秀賞を獲得した「当直ドクターなび ~時間外救急医療お助けシステム~」は、夜間や休日などに時間外診療を行っている医療機関で、当直している医師の専門科を調べるサービス。Rubyなどのオープンソース・ソフトウエアに安価に構築し、地方自治体などに販売するビジネスモデルである。

 「患者受け入れ態勢の無駄がなくなり、患者と医師双方の負担軽減につながる」(松江工業高専 情報工学科4年 川上茜氏、福間加菜氏)。家族が急病になった時に、どの病院に連れていいのかわからず、困ったことから発想したという。

 学生部門で優秀賞に選ばれたのは松江商業高校 杉原葵氏の「菜園.COM」。家庭菜園をインターネットを通じて貸し出すビジネスで、Webサイトで菜園の様子を閲覧できたり、SNSと組み合わせることで農業への関心を高めることも狙っている。

 奨励賞となった松江商業高校の青山奈那美氏、秦祐紀氏、門脇千穂氏の「開発★クラブ」は、ユーザーが欲しい商品のアイディアを投稿し、企業が商品化するもの。

 同じく奨励賞の松江商業高校 岩水成美氏の「ユーザー参加型懸賞サイトの運営」は、誰でも懸賞を提供することができるサイトを開設するというアイディア。一般ユーザーが誰かにあげたい賞品を提供したり、個人経営者が広告目的に懸賞を実施することができる。

受賞者を表彰する松江市長 松浦正敬氏(左)(写真提供:しまねOSS協議会)
受賞者を表彰する松江市長 松浦正敬氏(左)(写真提供:しまねOSS協議会)
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 授賞式のプレゼンターをつとめた松江市長 松浦正敬氏は「松江市では市の情報システムにRubyを積極的に採用し、オープンソース・ソフトウエアによる地域の活性化に取り組んでいく」と挨拶。会場には、まつもとゆきひろ氏も姿を見せていた。