写真●NTT持ち株会社の三浦惺社長
写真●NTT持ち株会社の三浦惺社長
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 NTT持ち株会社の三浦惺社長(写真)は,2010年2月5日に開催した決算会見で,原口一博総務大臣が2009年12月に発表した「原口ビジョン」(関連記事)についてコメントした。

 原口ビジョンでは「2020年にすべての世帯でブロードバンド・サービスを利用」といった目標を打ち出している。三浦社長は「ITを活用して経済成長を促すという原口ビジョンの基本的な方向性は我々の考えとも一致している。ビジョンの実現に向けて積極的に貢献していきたい」との考えを示した。

 ただ,原口大臣がNTTの光アクセス回線部分を別会社化し,他事業者も資本を出し合って共有化する方法もあるのではといった発言をしたとの一部報道については,強い警戒感を示した。三浦社長は「公式には話を聞いておらず具体的な中身は分からない。コメントは難しい」としながらも,「仮にNTTの構造分離だとしたなら,サービスを持たない会社は設備投資インセンティブが働かない。トータルでうまくいかないのでは」とけん制した。

 英国やオーストラリア,シンガポールが国内の通信事業者のアクセス部分の構造分離策を取ってブロードバンドを広げている点については,「いずれも競争が進展せず,国が補助金を出さないと世界に遅れてしまうという事情がある。日本はエリア・カバー率で9割以上,世帯普及率でも30%を超えるまでブロードバンドが広がっている。これらの国とまるで実態が違う」と,これまでの主張を繰り返した。

 原口ビジョンの「ブロードバンド100%普及」にNTTグループがどのように貢献するのかという質問に対しては,「まずブロードバンドをどう定義するのかが問題。原口大臣は“光の道”という言葉を使っているが,象徴的な言葉として使っていると理解している。ブロードバンドにはCATVや無線LAN,WiMAXやLTE(long term evolution)も含まれる。NTTグループとしてトータルに貢献できる。2020年までにはみんなが使える状況になっているのでは」(三浦社長)とした。

 一方で三浦社長は,「アクセスの話も大事だが,ブロードバンドの普及はいかに利活用を進めるのかにかかっている」と強調。アクセス部分の議論に終始せず,利活用を含めた議論を進めたい考えも示した。

光契約2000万の達成は「2012年度くらい」

 三浦社長は,かねてから中期経営目標としている「2010年度末時点で累計2000万件の光契約数」についてもコメントした。2009年5月の段階で「達成は困難」(関連記事)と発言し,新しい目標年度は設定していなかったが,今回「2012年度くらいには達成したい」(三浦社長)と具体的な達成見通しの時期を示した。なお,決算で発表した2009年12月末現在のフレッツ光の契約数は1277万9000。2010年3月末の予想は1363万4000としている。