今回の社長交代の理由は。
川村 昨年、私が引き受けた当時は、3年連続の赤字で、まずは“出血”を止めるのが最優先だった。そのためには会長と社長を兼務することで、意思決定を速くせざるを得なかった。
1年が経過して、大きな出血を止め、課題だった事業も合理化できた。第3四半期が終わり、最終予想も含めて一定の成果が出た。そうした状況で、今度は会社として攻めに出なければならない。そのためには、会長と社長を兼務していると、機会損失も多くなるので、二人で手分けして取り組むことにした。
業績面での危機は完全に去ったのか。
川村 まだ去ったとは思っていないし、油断はできない。ただし、昨年の2月や3月のように“出血”が続いているという状況ではなくなった。
社長と会長の役割分担は。
川村 日常業務については社長が決裁する。長期的な問題、例えば、民と官が連帯して取り組むケースなどは会長の仕事になるだろう。
社長になってまず何をしたいのか。
中西 社会イノベーション事業の中核となる電力電機をさらにグローバルに飛躍させるための仕込みをしてきたが、これをさらに強力に推進していきたい。最近の電力ビジネスの環境は変化している。従来の機器や技術を単純に買ってもらうだけではなく、オペレーションやサービスなど多様な要素を組み上げることが必要になっている。社長として強いリーダーシップを発揮して、取り仕切っていきたい。
今後のグループ会社の再編についての方針は。
中西 今は具体的なことは言えないが、この1年で打ってきた手を、引き続きいろいろな事業分野で打っていくことが必要だと考えている。
クラウドサービスが成長分野として話題になっている。他社との差別化についての戦略は。
中西 クラウドは情報技術としてとらえられることが多いが、具体的なサービスとして展開できる企業はまだ少ない。機器、システム、情報を一貫して提供できるという強みを生かしていく。
最近、品質の問題がクローズアップされている。今後品質と技術の信頼性をどう確保していくのか。
中西 日立はこれまでずっと品質を大事にしてきたという伝統がある。ただ、約5年前から品質の問題事例も出ており、品質への挑戦に終わりはないことを実感している。品質保証本部長を約1年務めてきたことを通じて、やはり初期の段階から品質を作りこんでいくという企業の姿勢が大事だと痛感している。
2人連続して社長の在任期間が非常に短かった。
中西 今は社長は10年続けるという時代でもないだろう。むしろ、早く若い人を育てなければならないと思う。