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 東京証券取引所の斉藤惇・代表執行役社長は2010年1月28日午後、定例記者会見の席上で、1月4日に稼働した新システム「arrowhead(アローヘッド)」(関連記事)の稼働後の状況を説明した。「アズ・オブ・トゥデー(今日の時点)では、arrowheadは100点の出来。(法規制が厳しい)現物株式の取引所としては、これ以上は考えられない最高の機械(システム)が実現した」と話した。

 斉藤社長は、1月の新システム稼働状況を旧システム時代の2009年12月と比較して、具体的な数字を挙げながら説明した。売買注文の処理速度について斉藤社長は「プロジェクト開始時には10ミリ秒(ミリは1000分の1)を目指したが、テスト段階では5ミリ秒だった。1月はそれを上回る性能の2ミリ秒で安定的に稼働している」と話した。

 TICK回数(株価が付いた回数)はおおむね旧システム時代の2倍で推移している。取引所全体の売買の活発度を表す「売買代金」は初日(1月4日)は様子見ムードが強かったが、その後は前月(2009年12月)を1割程度上回る水準で推移。総注文件数・約定件数も微増した。

 もっとも、これらの指標は市場環境に大きく影響される。斉藤社長は「売買代金の絶対値は大きくないが、(現在の市場環境は)旧システムで言えば売買代金が1日1兆円程度の感覚の相場。それが1日1兆5000万円~2兆円で推移しているのは、新システムの良い影響だ」と説明した。

 arrowheadの稼働に至るシステム開発プロセスにも言及。「鈴木さん(東証の鈴木義伯・常務取締役最高情報責任者=CIO、関連記事)のキャラクターのおかげで、外部メンバーも含めた“チーム鈴木”はモラルの高い戦闘集団になった。技術的に、処理速度・安定度などにおいて良いものが出来上がった」と話した。(arrwohead稼働までのプロジェクトの経緯については『日経情報ストラテジー』2010年4月号=2010年2月28日発売で詳報する予定である)

決算には誤発注事件の影響

 斉藤社長は同じ席上で東京証券取引所の2009年4~12月期第3四半期累計期間の決算を発表した。相場の低迷で営業収益は460億800万円(前年同期比14.6%減)となった。みずほ証券から提起されている「誤発注」を巡る訴訟(関連記事)にかかわる損害賠償金132億1300万円を特別損失として計上したことなどから、純利益は52億7100万円の大幅な赤字になった(前年同期は78億9400万円の黒字)。斉藤社長は「通期(2010年3月期)では何とか黒字に持っていきたい。(損害賠償金の)影響は大きいが、東証自身の株式上場について、事前の計画(2010年4月以降の早い時期)を変えない」と強調した。

■変更履歴
最終段落で東証が発表した決算を「2009年9~12月期四半期決算」としていましたが、正しくは「2009年4~12月期第3四半期累計期間の決算」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2010/02/15 18:20]