富士通の次期社長に就任する山本正己氏
富士通の次期社長に就任する山本正己氏
(写真:小久保松直)

 富士通は2010年1月22日午後2時30分に会見を開き、山本正己執行役員副社長(56)がこの4月1日付けで執行役員社長に就任する人事について説明した(関連記事)。次期社長の山本氏は「クラウドをベースにした新しい付加価値として、人に優しい『ヒューマンセントリック』なITを提供していく」と話した。現代表取締役会長兼社長の間塚道義氏は4月1日から代表取締役会長に専念する。

 新人事に向け山本氏は、1月22日付で執行役員副社長に昇格した。これまでは、2008年6月に就いた、執行役員常務兼システムプロダクトビジネスグループ長を務めていた。

 山本氏は、「1976年に富士通に入社して以来、ワープロやパソコン、携帯電話、サーバー、ストレージなど、プロダクト製品の設計・開発に一貫してかかわってきた。これらのIT製品が家庭や企業に入っていくのを黎明期から見てきた経験を生かしたい」と語った。

 富士通の課題の一つであるグローバル展開については、「強い富士通をさらに強くする。グローバルに攻めの姿勢で臨む」とした。富士通が掲げる、「2010年度にIAサーバーを世界で50万台販売する」という目標についても、「目標達成に向け引き続き努力する」と話した。山本氏には海外赴任の経験はないが、「2009年4月に富士通テクノロジー・ソリューションズを100%子会社化した際は、プロダクト展開のリーダーを務めた」と、グローバルビジネスにも見識があることを強調した。

 山本氏を次期社長に選んだ理由について、間塚氏は「IT産業は、クラウドコンピューティングなどにより大きく変わっていく。山本氏はこれまで、常に時代の変わり目に立ち会い、最先端の製品開発を経験してきた。変化を受け入れ、自らが考えられる人材だ」と説明した。

5人の副社長とともにグループ全体を考える

 山本氏の社長就任に伴い、副社長は現在の3人(22日付けで就任した山本氏を除く)から5人に増やす。現副社長のリチャード・クリストウ氏がグローバルを、現執行役員上席常務の石田一雄氏がクラウドなどのサービスを、現執行役員常務の藤田正美氏が管理部門を、現執行役員常務の佐相秀幸氏がシステムプロダクトを、現執行役員の生貝健二氏がソリューションビジネスを、それぞれ担当する。

 副社長が増えることについては、「従来は一人の副社長がサービスとソリューションビジネスの両方を担当していた。管理部門も、これまでは社長の担当だった。それぞれに責任者を置いたまでで、当社の事業規模に照らし合わせれば決して多すぎるということではない」(山本氏)と説明した。

 今後は専門性の高い5人の副社長が社長をサポートしながら、グループ全体について全員が考えるという。新体制について間塚氏は、「これまでは社長、副社長で相談し何か分からないことがあると各分野の専門家を呼んでいた。この3カ月の社長兼務によって、非常に大変なことを実感した。新体制によって、変化の激しい時代に対応できると思う」と語っている。

 ちなみに、現在副社長を務める広西光一氏と富田達夫氏、副会長を務める伊東千秋氏は3月31日付けで退任する。代表取締役、取締役の選任は2010年6月の株主総会までに検討する。株主総会では、山本氏を取締役就任をはかり、臨時取締役会で代表取締役に就く予定である。