写真●「IPv6 Summit in NIIGATA 2010」パネルディスカッションの様子
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 インターネット協会とグローバルネットコアは、新潟市内で「IPv6 Summit in NIIGATA 2010」を2010年1月20日に開催した。この会合は、インターネット協会が日本各地で現地の企業・団体と開催している「IPv6 地域 Summit」の一環。2009年度は、2009年11月に大阪で開催したのに続き2度目となる。今回は,二つの講演とパネルディスカッションが行われた。

 開会あいさつに続き、東京大学大学院情報理工学系研究科教授の江崎 浩氏が「2010年のインターネットの展望とIPv6」と題して基調講演を行った。江崎教授は、「グローバル社会全体を包み込むインターネットがいかにして、独立性・自立性と自律性、交流性を持つエコシステムとして継続的に社会を支えていくかを考える」というポイントを中心に話を展開。グリーン東大工学部プロジェクトなどの事例を引用しながら、IPv6へのシフトにより断片化しないようにシステムを作り、それを使って新しい都市設計を進めていかなくてはならないと説明。エコシステムへの期待としては、環境エネルギー対策としてセンサーネットワークを協調させたインフラを挙げ、それがあれば透過性の高いデジタル空間ができ、情報はデジタル化したことでゼロコストで流通させられ、いろいろな目的に使える安価な情報インフラが生まれてくると説明した。

 インテック・ネットコア代表取締役社長(インターネット協会IPv6DC議長)の荒野 高志氏は、「IPv4アドレス枯渇対応とIPv6導入の対応について」と題して、(1)アドレス枯渇問題をこうとらえる、(2)IPv6の本質をこう考える――の2点を講演した。アドレス枯渇については、「枯渇に対応しなくてはらない人と受益者が一致しない」「解決時間が不足」「ステークホルダーがわからない」「IPv4とIPv6が混ざるネットワークには相互接続性が喪失する危機がある」「IPv6や多重NATを採用したネットを使うアプリケーションは動作チェックが必要」などの点を指摘。IPv6はアドレス数の多さが本質と指摘し、「モノがつながる」「いつでもどこでも」「ネット上でオープンに連携」「様々な情報が流通」といった要素を持つ「スマートフュージョン」と呼べるインフラが現れ、様々な産業の第一歩になるのではないかと予想した。

 後半は「IPv6 readyな社会がやってきた!?~ビジネスと生活者のネットワークの展望~」と題したパネルディスカッションを開催(写真)。司会は慶應義塾大学環境情報学部教授の中村 修氏 が務めた。パネリストはインテック・ネットコアの荒野社長、NTTコミュニケーションズ法人事業本部u-Japan推進部企画戦略部門長の山下 達也氏、新潟でプロバイダー事業をしている企業としてグローバルネットコア ネットワーク事業部部長の金子 康行氏と銀座堂 代表取締役で介護福祉士の藤川 成康氏が登場した。

 グローバルネットコアの金子氏と銀座堂の藤川氏は、パネルのなかでプレゼンテーションを行った。金子氏はこの日、データセンター接続サービスにIPv6インターネット接続を加えたことや、プロバイダーとしてトンネル接続サービスを近日開始することを発表。県内のプロバイダー各社にヒアリングしたIPv6の需要と対応予定を紹介した。そして「IPv4アドレスの枯渇やNTTのNGNでIPv6インターネット接続サービスが始まる時期は意外と近く、ある時代を境に急激に需要が高まる可能性もある」と分析。エンドエンドのコミュニケーションを成立させるには、業界全体の取り組みが必要と主張した。銀座堂の藤川氏は、同社のIPv6対応の取り組みや自社開発のデュアルスタック対応ブロードバンドルーターを紹介した後、介護福祉士の観点から介護領域におけるIPv6導入というテーマで、認知症の方への見守り支援のシステムの概要や効果を説明。ベッド以外のセンシングシステムや施設中のセンサーの自動連携による入所者の行動予測などの可能性を挙げた。その後登壇者は、IPv6のセキュリティにおける考え方などで意見を出し合い、パネルディスカッションは閉幕となった。

[グローバルネットコアが出したIPv6接続サービスのプレスリリースへ]