写真●インフォテリア 執行役 兼 エンタープライズ事業部 事業部長の油野達也氏
写真●インフォテリア 執行役 兼 エンタープライズ事業部 事業部長の油野達也氏
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 「実践的なクラウド・サービスの形とは、オンプレミス、パブリック・クラウド、プライベート・クラウドのデータが連携する“ハイブリッド・クラウド”」---。2010年1月21日、日経BP主催のセミナー「クラウド時代を読み解く!クラウドコンピューティングと企業情報システムの最適解」に登壇したインフォテリア 執行役 兼 エンタープライズ事業部 事業部長の油野達也氏(写真)は、企業ユーザーにとって現実的なクラウド・サービスの形とは「ハイブリッド・クラウド」であると語る。その前提で、企業システムへクラウドを導入する際のポイントと、導入計画の立案手順を解説した。

 油野氏はまず「クラウド・サービスとは何か」を説明。「ソフトをWebブラウザ上で使えるようにして従量課金にしただけではクラウド・サービスではなく、ただの“SaaS(Software as a Service)”。クラウド・サービスとSaaSの違いは、スケールアウトできるかどうかだ」(同氏)と、利用規模に応じて柔軟にスケールアウト/スケールダウンできることがクラウド・サービスの最大のメリットとした。「オンプレミスで運用しているアプリケーションをクラウドへ移行しようとする際には、そのシステムがスケールアウトする必要があるのかどうかをよく考える必要がある」(同氏)。

 企業システムへのクラウド・サービスの導入計画を立てる第一ステップは、この「スケールアウトする必要があるかどうか」という視点で、各業務システムをクラウドにおくべきか、オンプレミスにおくべきかを分析することだ。「クラウド・ベンダーはクラウド・サービスのコスト・メリットを強調する。しかし、自社の情報システムを考えたとき、クラウドである必要があるものはどのくらいあるのか」(同氏)。クラウドに移行すると判断した業務システムでは、資産の性質に応じて、ファイアウォール内にあるプライベート・クラウドと、プライベート・クラウドのどちらにのせるべきかを検討する。

 第二ステップは、各業務について、どのクラウド・サービスを利用するのが適当かを調査することだ。このステップでの重要なのは、「クラウド・サービスの機能だけでなく、ベンダーと結ぶ契約内容まで慎重に調査すること」だと、油野氏は指摘する。「クラウド市場は歴史が短いため、次々と新しいサービスが生まれている。言い換えると将来次々に消える可能性があるということだ。ベンダーの都合でサービスが終了することや、自社の都合でサービスを乗り換えることを予想した契約を結ぶことが重要だ」(同氏)。

 第三ステップでは、オンプレミス、パブリック・クラウド、プライベート・クラウドの三者間で、いつでもデータ移行とデータ連携ができる“ハイブリッド・クラウド”を実現する仕組みの実装計画を作る。「自社のビジネスの都合に合わせて、いつでも三者間でデータを移動できるよう、“移行完了はない”という前提でシステムを設計することが重要だ」(油野氏)。