2010年1月4日、IT企業各社の代表が年頭のコメントを発表した。2010年のIT市場について、「いまだ本格回復に至らず、厳しい経営環境が続く」との見解で一致。だが、各代表が掲げた経営スローガンには、「成長」「攻め」といった市場の回復を予感させるキーワードが含まれている。ビジネスの柱としては、「クラウド・コンピューティング」を挙げるトップが多い。

伊藤忠テクノソリューションズ 奥田陽一代表取締役社長

 顧客企業はIT投資を控えているものの、依然として戦略的分野への潜在的なニーズは高く、IT資産の所有から共有へのニーズの変化、環境意識の高まりなど、IT投資意識の変化が見られます。CTCでは、これまでの「挑戦」、「飛躍」、「進化」、「変革」という言葉を踏まえ、2010年は「成長」というスローガンを掲げてビジネスを推進します。IT総合企業として、引き続き「サービス」、「開発・SI」、「製品販売」の3つの事業領域をバランスよく強化することで、安定した収益基盤の形成を目指すとともに、顧客ニーズにワンストップで対応し、基幹系システムの構築やフルアウトソーシングなどにも積極的に取り組む所存です。さらに、数年前から取り組んできた、仮想化統合基盤の構築ビジネスの加速に加え、クラウド・ビジネスを強化します。

 プライベート・クラウド関連では、ITインフラ統合のコンサルティング・サービスや仮想化環境構築のためのソリューション、仮想化環境の導入後の運用支援サービスが、そしてパブリック・クラウド関連では仮想化されたハードウエアをサービスとして提供する「IT統合基盤サービス」や、その上で稼働する物流最適化のためのサービス、メールASPサービスなどが既に始まっています。今後も、グループ内のリソースをフル活用するとともに、各組織が連携してサービス・メニューの拡充を図り、顧客ニーズに迅速に対応してまいります。

インターネットイニシアティブ 鈴木幸一代表取締役社長

 世界は様々な難問を抱えながら、新年を迎えました。この時代、世界を仕組みごとかえてしまう可能性をもった技術革新が、情報通信分野に起こった、インターネットです。「通信」と「情報」が世界の仕組みが変わるであろうことは、40年も前から予測されてきたのですが、それが具体的な形となって、浸透し始めてきました。「クラウド・コンピューティング」という言葉は、あらゆる情報システムがネット上に存在していく過程の象徴的な意味合いを持っています。それは、メディアを含めた情報のあり方、コンピュータ・システムそのもの、あらゆるデータの持ち方など、世界規模で根本の変化をうながすものです。

 IIJは、わが国のインターネットの商用化から、今日に至るまで、インターネットにまつわるあらゆる技術面で、イニシアティブをとり続けてきました。より本質的な変化が具体化をはじめた本年は、IIJにとって、インターネットの商用化を始めたときと同じような、重要な意味を持つ年となります。「信頼性・品質」という創業以来の社是を踏まえ、大きな革新に貢献していく所存です。

東芝ソリューション 梶川茂司取締役社長

 2010年のIT市場は、回復基調にはなく、さらに厳しくなると見ております。不透明で厳しい市場環境の中では、「スピード第一」で経営体質を強化することが重要ではないでしょうか。東芝ソリューション・グループとして更なる構造改革による利益体質強化を推進するとともに、新たなマーケットを開拓するためのポテンシャルを追求し、市場のニーズにあったソリューションを提供していきます。特に、社会インフラ関連でのIT構築の経験と実績を強みとして、“「人」と「技術」と「サポート」の東芝ソリューション”として、市場のニーズに応えていきます。

 具体的には、市場競争力のある各種業種・業務・プラットフォーム・組み込み分野における自製ソリュ-ションの継続強化を進めるとともに、スマートグリッド、燃料電池、二次電池(SCiB)などの東芝注力事業にも取り組んでいきます。また、クラウド、グリーンIT、IT技術を活用した情報管理分野や運用ビジネスなどの成長分野においても強みを発揮していきたいと思います。

日本アイ・ビー・エム 橋本孝之代表取締役社長

 日本の景気は緩やかに改善しているものの、本格的な経済回復への道筋が明確に描かれたわけではありません。しかし、世界では、利己的な利益追求に偏重した経済モデルを見直し、本当に豊かで持続可能な社会を目指す価値観が確実に浸透してきています。IBMは一昨年来、ITを活用して地球規模のさまざまな課題を解決し地球をより賢くしていく「Smarter Planet」というビジョンを提唱し、社会やお客様の変革を支援する体制を整えてきました。当社では、お客様の課題をより深く理解し経営に貢献できるよう、我々自身のスキルをさらに高め、お客様やパートナーへの支援体制をさらに強化していきます。

 特に、お客様のビジネスモデルやプロセスの変革に迅速かつ柔軟に対応できる革新的なIT活用モデルであるクラウド・コンピューティングや、多様で膨大なデータを即時に分析して変化を予見し、より的確な意志決定を支援するBAO(Business Analytics and Optimization)に注力していきます。

ヤフー 井上雅博代表取締役社長

 2009年は「メタボ解消」で始めました。1年間経ってみて、無駄を省き効率的にした結果、目に見えて筋肉質の会社になったと実感しています。4月に行った組織の大改編の効果もいろいろ出てきて、これから本格的な成果が期待できる段階まできたと感じています。

 2010年のキーワードは「攻める」です。せっかく手に入れた筋肉質の体形は維持しつつ、中長期に向けての必要な投資は積極的に行っていきたい。つまり、選択と集中で、筋肉質に加えてさらに「アスリート体形・体質」を目指していきます。そのプロセスにはつらい筋トレもあるだろうと思いますが、(2009年に)これだけのメタボ解消を1年間でできたのだから、筋トレにも必ず耐えられると確信しています。中長期で力を入れていく分野としては、モバイル、スマートフォン、クラウド、インタレストマッチなどの広告、Eコマースなど。選択と集中といっても、大きな分野がたくさんあります。「攻める」相手として不足はありません。

レッドハット 廣川裕司代表取締役社長

 2009年は、レッドハットにとって大きな躍進をとげた年となりました。世界的不況が進んだ中、売上高・利益でも2桁成長を記録した数少ないIT企業となっただけでなく、7月には米国S&P500の仲間入りをし、名実ともに米国におけるリーディングIT企業となりました。日本市場でも全社売上と同様に2桁成長を達成いたしました。2010年は、日本においてLinux市場が、UNIX市場はもとよりメインフレーム市場をも凌駕する規模に成長すると見られています。ミドルウエア/SOA分野でもOSS(オープンソース・ソフトウエア)市場が倍化すると予測されています。

 レッドハットとしても、2010年には、仮想化(KVM)/クラウド・コンピューティング対応ソリューションの拡大、ミッションクリティカル対応取組みの強化、SOA/ミドルウエアなどの分野での機能・性能強化などを図って参ります。さらに、これらの技術革新・新製品新機能を元に、パートナーと一体となって、さらなる「徹底したコスト削減ソリューション」の提供と「信頼されるサポート・サービス、営業体制」の強化などの施策を図り、日本市場に於けるOSSソリューションの一層の普及を通じて、日本IT業界全体の成長へ貢献すべく邁進する所存です。

EMCジャパン 諸星俊男代表取締役社長

 2009年は、IT業界にとっても厳しい一年でした。EMCジャパンでは、お客様のコスト削減のため、企業のITインフラストラクチャを見直す「全体最適コンサルティング・サービス」の積極的な提案や、ファイナンシャル・サービスメニューの充実を図るなど、情報インフラの総合ソリューション・ベンダーとして、お客様の求めている解決策を、様々な形でご提供してまいりました。EMCジャパンでは、2010年の重点戦略として、(1)クラウド・コンピューティングへの対応、(2)EMCグループ(EMC/VMware/RSA/DataDomain/Iomegaなど)の総合力の拡大、(3)お客様の視点に立ったよりよい製品・サービスの提供--の3つの柱を掲げていきます。

 EMCでは、「クラウド」をすぐにでも実行できると考えている経営層と、実際に運用するための環境を整えるのが大変な現場との間のギャップを埋めるべく、効率的なITインフラの構築や管理がますます重要になります。「クラウド」に進む前に、まず必要なことは、自社のITインフラを見直し、様々な問題に気づくことなのです。今年早々には、日本における具体的な販売方法、ソリューション提供について、きちんと発表させていただく場を設ける予定です。2010年は、仮想化のヴイエムウェア、セキュリティのRSAセキュリティ、重複除外のデータドメイン、コンシューマ向けストレージのアイオメガなどの買収した企業とますます連携を強め、新たな総合力でお客様のお役に立ちたいと考えています。