総務省の原口一博大臣は2009年12月22日,地域主権型社会への転換を目指す「緑の分権改革推進プラン」と,ICTの活用による持続的な社会の実現を目指す「ICT維新ビジョン」の二つを,原口ビジョンとして発表した。

 このうち「ICT維新ビジョン」では,「地域の絆の再生」,「暮らしを守る雇用の創出」,「世界をリードする環境負荷の軽減」の3点を,2050年を見据えた達成目標として挙げた。

 達成目標のうち「地域の絆の再生」については,2020年時点で4900万世帯すべてがブロードバンド・サービスを利用できることを目標とした。具体的な施策例として「ICTの利活用を拒む規制制度の集中的見直しを完了し(2010年中),『ICT利活用促進一括化法』を制定する」,「ホワイトスペースなどを活用した市民メディアを全国展開する(2015年)」を挙げた。

 このほか「地域の絆の再生」に関連して,「デジタル教科書をすべての小中学校全生徒に配備する(2015年)」,「すべての申請処理を電子化した国民本位の電子行政を実現する(2014年)」,「24時間365日使えるオンライン行政サービスを利用可能にする(2014年)」,「全国民を対象にしたEHR(Electronic Health Record)を実現する(2015年)」といった施策も示した。

 第2の達成目標である「暮らしを守る雇用の創出」に関しては,ICT関連投資を倍増することによって2020年以降約3%の持続的経済成長を実現することを目標とし,注目の施策例として「2011年にグローバル展開支援(開発調査,プロジェクト組成,ファイナンスなど)を行う体制を整備・稼動する『ICTグローバルコンソーシアムの組成』」を示した。

 そのほかの施策例として「35万人の高度ICT人材を育成する(2020年)」,「全自治体で約1万人の『ICTふるさとリーダー』を育成し,地域のICTプロジェクトを自立化支援する(2015年)」,「デジタル世代の生み出す事業を,年間100件海外へ展開する(2015年)」,「ふるさとコンテンツを世界発信するための流通基盤の構築を完了する(2015年)」なども提案した。

 第3の達成目標の「世界をリードする環境負荷の軽減」では,2020年時点で二酸化炭素の排出量25%削減という政府目標のうち,10%以上をICTパワーで実現することを目指す。そのための施策例として,「全国のデータセンターのPUE(Power Usage Effectiveness)1.2以下(既存の一般的なデータセンターのPUEは2程度。1に近いほど効率的)を実現する(2015年)」,「スマートグリッド,次世代ITS,IPv6センサーネットなどの社会インフラ高度化プロジェクトを全国300カ所で展開する(2020年)」,「霞が関の全職員による週一回のテレワークを実現する(2012年)」,「売電収入(ポイント)をエコ商品の購入,電気自動車への充電対価などにあてる『グリーンコミュニティーマネー』の全国展開を完了する(2020年)」などを挙げた。