図1 これまでの著作権侵害対策の経緯
図1 これまでの著作権侵害対策の経緯
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図2  P2Pソフトを悪用した著作権侵害対策プロジェクトの内容
図2  P2Pソフトを悪用した著作権侵害対策プロジェクトの内容
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 不正商品対策協議会(ACA)は2009年12月15日に記者会見を開催し,P2Pソフトを悪用した著作権侵害への対策の現状と今後の取り組みについて述べた。

 2009年11月30日に,警視庁や京都府警など10の都道府県警察は一斉取り締まりを行い,ファイル共有ソフト「Share」(シェア)を通じて映画や音楽などの著作物を権利者に無断でアップロードして送信できる状態にしていたとして,合計11人を逮捕した。

 不正商品対策協議会 代表幹事の高井英幸氏は今回の一斉取り締まりについて,「インターネット上の著作権侵害の排除に向けて大きな効果が上がったと感じている。警察には深く御礼を申し上げる」と述べた。さらに「いまやP2Pソフトによる著作権侵害は世界共通の問題になっている」としたうえで,「幸いにも2010年1月1日からは違法コンテンツであることを知りながらそれをダウンロードすることも著作権法違反となる」とコメントし,改正著作権法(2010年1月1日施行)による違法ダウンロードの抑制効果に期待感を示した。

 次にACA 事務局長の後藤健郎氏が,今回の取り締まりの経緯を説明した。今回の取り締まりの出発点となったのは,ACA や日本音楽著作権協会(JASRAC)などの権利者団体が参加した「警察庁総合セキュリティ対策会議」における協議である。警察庁総合セキュリティ対策会議が取りまとめた「2007年度報告書」には提言として,「ISPからの確認(警告)メールによる注意喚起」「ISPによるアカウントの停止」「著作権者などから発信者への損害賠償請求」「警察による捜査および検挙」が盛り込まれた(図1)。

 この提言を受けて,権利者団体とISP事業者団体は2008年5月に「ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会(CCIF)」を立ち上げて,提言された事項の実行に向けて活動を開始した。こうした中で2009年8月下旬に,警察庁から今回の一斉取り締まりについて協力の打診があった。「ACAは効果的な取り締まりを従前より希望していたため,警察 の取り組みに協力することにし,今回の一斉摘発に結び付いた」(後藤氏)という。

 さらに後藤氏は,ACAの今後の取り組みである「P2Pソフトを悪用した著作権侵害対策プロジェクト」の内容を説明した。このプロジェクトは,「法制度の改善要請」「効果的な刑事摘発の要請」「民事的対応の検討」「各種注意喚起活動の推進」「技術的対策の推進」の五つの項目からなる(図2)。

 法制度の改善要請は,P2Pソフトを悪用した著作権侵害行為に対して迅速に対応できる環境の整備を目的に行う。効果的な刑事摘発の要請の実現については,今回の一斉取り締まりのような取り組みを引き続き実施するため,全国の警察との連携を強化する。民事的対応の検討では,侵害者への損害賠償請求を視野に入れていく。各種注意喚起活動の推進の取り組みとしては,プロバイダ責任制限法ガイドラインの見直しに向けた関係者との協議や,改正著作権法の施行に伴う不正著作物ダウンロードの違法化に関する注意喚起を進める。技術的対策の推進は,より効果的な著作権侵害対策の実現に向けたクロール技術の向上などをイメージする。