マルチメディア放送ビジネスフォーラム(ホームページ)は2009年12月11日,第5期の第2回総会を実施した。この中でエフエム東京は,VHF帯のローバンド(V-L)を利用するマルチメディア放送のハード事業について,置局の考え方と,損益計画の考え方を示した。

<4ブロックと高速道路を先行>
 置局については,まず関東・甲信越ブロック(親局の設置場所は東京),東海・北陸ブロック(同名古屋),近畿ブロック(同大阪),九州・四国ブロック(福岡)の4ブロックを先行させる。2012年には親局を設置し,そのあと3年間は高速道路をカバーすることに集中して投資する。その後,2015年から全国のブロックで親局を展開するとともに,準親局や中継局の整備を進める。2018年には,世帯カバー率として90.14%にすることを想定する。なお,各ブロックで提供するサービスのセグメント数は9セグメントとし,関東・甲信越ブロックと近畿ブロックはプラス9セグメント(合計18セグメント)と想定している。

<1セグ当たり平均で1.2億円,設備保証金の考えを導入>
 こうした置局計画をベースに,ハード会社の損益計画の考え方も示した。それによると,セグメントの使用料は全国平均で,1セグメント当たり年1.2億円を想定する。ただし,地域間の経済規模の格差もあることから,関東・甲信越ブロックは2億円,近畿ブロックは1.5億円,東海・北陸ブロックは1億円,その他のブロックは7000万円とする。

 毎年度の使用料は,ブロックごとの世帯カバー率に連動して算出する。カバー率が80%に達した時点で満額とする。40%だと半額になる。こうした考えに基づくと,例えば1/6セグメントを利用してFM放送並みの音声放送とデータ放送を提供したいと考えた場合,関東甲信越では2012年時点で約3000万円,2018年で約3300万円となる。関東では,東京に親局を設置すると最初から広域をカバーできるので,金額の変化は小さい。一方,九州・沖縄地区では2012年が約200万円で,世帯普及率が高まる2018年で約1200万円である。

 ユニークなのは,設備保証金という考え方を導入するというアイディアである。全ブロック一律で1セグメント当たり5億円に設定し,初年度契約時に全額支払うという形態である。撤退時には全額返金することにしている。ハード・ソフト分離の制度が導入されたからこそ可能になる考え方である。

 今回FM東京が示したこうした考え方は,まだV-Lを利用したマルチメディア放送の枠組みが決まっておらず,あくまで現時点での一つの考え方である。しかし,帯域幅とその利用金額について具体的な数字を示したことは,今後第三者がソフト事業への参入を検討する場合にも,目安となるガイドラインとして,大いに参考になりそうだ。