政府の総合科学技術会議は2009年12月9日、2010年度の科学技術予算における国策の次世代スーパーコンピュータ開発事業について、「必要な改善を行いつつ推進」と評価した。行政刷新会議の事業仕分けでは「事実上の凍結」と判定されていた。この見直しにより、迷走する国策スパコン開発は復活する見通しになった。ただ開発総額1200憶円超の妥当性については議論されなかった。

 総合科学技術会議では、国策スパコンを担当する奥村直樹議員が、「科学技術の最も重要な研究開発分野である」と指摘。議長の鳩山由紀夫首相は「予算に十分反映できるように努力したい」と述べた。ただ、事業仕分けにおいて事実上の凍結判定を受け、開発続行に疑問を呈す世論もあることから、同会議は「国民の理解を得るための改善を行って推進するべき」と判断した。

 具体的には、文部科学省と理化学研究所、富士通が中心になって事業を推進する現状に対し、他の省庁および、さらなる産学官の連携が必要とした。2009年5月にNECと日立製作所が開発から撤退したことについては、「NECと日立が担当していたベクトル部のソフト利用者への配慮が必要」と指摘した。

 加えて、国策スパコンで扱う必要性がある具体的な研究分野のソフトと利用者を明確にすることや、技術および産業で国際競争力のある戦略を示すことにも言及した。

 ただ、重要な論点である開発費の妥当性については、「文科省から来年度概算要求額268憶円は妥当であるとの報告を受けている」として議論しなかった。国策スパコンによる経済波及効果についても、文科省の報告を受けるにとどまった。

 国策スパコンは、政府の行政刷新会議が11月13日に実施した事業仕分けで「限りなく予算計上見送りに近い縮減」と事実上の凍結判定になった(関連記事)。だが関係者からの猛反発を受けて、政府は復活を示唆する発言をしていた(関連記事)。