写真1●グーグル代表取締役社長の辻野晃一郎氏
写真1●グーグル代表取締役社長の辻野晃一郎氏
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写真2●米グーグル上級副社長兼最高財務責任者のパトリック・ピシェット氏
写真2●米グーグル上級副社長兼最高財務責任者のパトリック・ピシェット氏
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 グーグルは企業の経営者やマーケッターなどを対象にしたイベント「Google Business Day」を2009年12月3日に開催した。キーノートセッションでは、グーグル代表取締役社長の辻野晃一郎氏と米グーグル上級副社長兼最高財務責任者のパトリック・ピシェット氏がそれぞれ講演した。ピシェット氏は検索される言葉の傾向から、「トンネルの向こうに明かりが見えてきた」と現在の経済状況を推測した。

 辻野氏は冒頭、2009年を総括する言葉として「チェンジがふさわしい」と、米国の大統領の交代や日本の政権交代、経済環境の変化について触れた。そうした中、同社においても、次の成長に向けて新しいことへのチャレンジをした年だったと振り返った。

 2009年の取り組みとしてはまず、質問の投稿・公開や投票の集計ができるサービス「Googleモデレーター」を活用した「未来のためのQ&A」という企画を紹介した。この企画は、衆議院選挙の立候補者に対してユーザーが質問を投げかけたり、ほかのユーザーの質問から興味深いものに投票したりして、票が多く集まった質問を5つ選ぶ。それに対して、立候補者や政党が動画投稿共有サービス「YouTube」を使って動画で回答するというもの。その結果、5000件の質問、27万件の投票が寄せられ、回答の動画は400本に上った。選挙期間中は140万人が企画に参加したという。

 続いて、「Google」における選挙期間中の「自民党」と「民主党」の検索回数の推移を表すグラフを紹介。そのグラフでは8月から9月にかけて、民主党の検索回数が爆発的に増えており、民主党の勝利は予測できたと解説し、「検索エンジンは世論を反映する。世の中の声を広めるのに有効なツールになっている」(辻野氏)と説明した。

 次に、ケータイ向けOS「Android」搭載端末がNTTドコモから国内向けに発売されたことに言及。「2010年にはさまざまなメーカーからAndroid搭載端末が発売されることを想定している」(辻野氏)と期待を述べた。

 講演はネット広告の話へと続いた。同社は広告媒体としてYouTubeの充実に力を入れている。既に300以上のコンテンツパートナーがおり、さらにテレビ朝日やTBSが公式チャンネルを開設した事例を紹介。ケータイだけでも動画が1日1000万回再生される規模になっている。辻野氏は、「今後も広告メディアとして力を入れていく」と意気込みを見せた。

 また、2009年は不況の影響などから「広告の費用対効果が見直された年」(辻野氏)であったが、そうした動きの中、検索連動型広告の「Google アドワーズ」は「効果的な広告と認識してもらえている」と説明。YouTubeも広告媒体としての価値が向上することで、動画を活用したブランディングから、検索にひも付けて広告を表示するようなターゲティングまで広告ソリューションの幅が広がったと説明した。2010年にはアドワーズの進化はもちろん、ケータイ、地図と連動した地域情報にも焦点を当てて、開発に力を入れていくと展望を明かした。

 辻野氏は最後に、「グーグルはいろいろ手広くやっているように感じるかもしれないが、クラウドコンピューティングの将来に揺ぎのない確信を持っている」と述べた。「個人の生活を豊かにするだけではなく、企業のビジネス拡大においてもクラウドコンピューティングの恩恵は計り知れない」と語り、「クラウドコンピューティングの発展に注力していく」と締めくくった。

ネットはまだ加速的に進化する

 続いて、ピシェット氏が登壇。最初に現在の経済状況を「トンネルの向こうに明かりが見えてきた」と例えた。日本でも同様の兆候が見られるという。その理由として、日本におけるGoogleの検索ワードの変化を紹介した。ピシェット氏は「レストラン」「自動車購入」「住宅購入」といったキーワードでの検索が増えていると説明。特に、不動産を対象とした検索が増えているという。一方で「失業保険」「自立支援」「メンタルヘルス」といったネガティブなキーワードでの検索は減少しているという。こうした結果から「状況はまだ厳しいが、回復の種はまかれている」と解説した。

 一方で、「デジタルの世界での景気後退は皆無」(ピシェット氏)だと言い切る。全世界のインターネット人口は17億人に達しており、これは全人口の25%に相当するという。また、16あるネット先進国のうち約30%の人は余暇や自由な時間をネットに費やしていると説明。「40歳未満においては、ほぼ全員がネットユーザー」(ピシェット氏)だと、市場の大きさを示した。

 次にデジタルコンテンツの増加について触れた。「人類誕生から2003年までの間に、人は5エクサバイトのデータを記録してきた。ただ、現在ネット上では48時間で同じ容量のコンテンツが作られている」(ピシェット氏)と説明した。また、「インターネットに6分間を費やすとすればそのうち1分間はソーシャルメディアにアクセスしている」(同氏)のが現状で、「Facebook」や「Twitter」などの利用が一気に広がっているという。「ネットの世界は加速化以外は考えられない」と説明した。

 ピシェット氏はさらに、ネットはまだ成熟期には至っていないとは語った。そこで、今後のデジタル経済に影響する変革として、「オフラインのものはすべてオンラインになる」「生活はクラウド化する」「イノベーションは安価になる」「すべてはローカライズ化される」「検索はよりパーソナルになる」「すべてのマーケティングはデジタルになる」の6つのポイントを示した。

 すべてオンラインになることについては、「Google ブック検索」において、既に1000万冊の本がインデックス化されていることを紹介。また、京都大学が講義を含めた500本の動画をYouTubeで公開するなど、大学の講義もオンラインで見られるようになっていることを具体例として挙げた。