写真1●富士通「館林システムセンター新棟」の外観
写真1●富士通「館林システムセンター新棟」の外観
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写真2●サーバー室内の様子
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写真3●手のひら静脈認証技術を使ったセキュリティシステム写真3●手のひら静脈認証技術を使ったセキュリティシステム
写真3●手のひら静脈認証技術を使ったセキュリティシステム写真3●手のひら静脈認証技術を使ったセキュリティシステム
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 富士通は2009年11月20日、稼働したばかりの新データセンター「館林システムセンター新棟」を公開した(写真1)。地上5階、地下1階の新築ビルで、エネルギー利用効率が高い設備を導入。隣接する旧棟と比較して約40%二酸化炭素(CO2)排出量を削減した。「クラウドサービスを提供するための次世代基盤として、最新設備を導入した」とサービスプロダクトビジネスグループの石田一雄グループ長は話す。

 新棟は、95年に開設した館林システムセンターの駐車場跡に建築した。延床面積は2万3000平方メートルの免震構造の建物だ。特徴は、集積度が高いIT機器を導入可能であることと、環境配慮技術をふんだんに導入していることである。

 3階から5階までがサーバー室である。約1万1400平方メートルのスペースに、3600ラックが設置可能だ。ラック当たりの電力供給量は最大20kVA、床荷重は1平方メートル当たり1.2トンと、国内のデータセンターとしては高いスペックを誇る(写真2)。通常のデータセンターの倍近い値である。「当社のラックマウント型サーバーであれば満載できる。ブレードサーバーを複数搭載しても問題ない」(富士通)。

 新棟のサーバー室では、顧客企業のサーバーを預かるほか、富士通自身が提供するクラウドサービス用のサーバーも設置する。新棟だけで約1000台のサーバーを設置する計画だ。「日本企業が要求する高いサービスレベルに応えたい」(石田グループ長)。変電所から2系統で給電するほか、自家発電装置を充実させるなど、信頼性向上を図った。

 もちろん、セキュリティ強化にも力を入れた。サーバー室に入室して作業するまでに、手のひら静脈認証やRFIDを使った人位置管理など、最大7カ所のチェックポイントを設けた(写真3)。サーバーラックの扉も指紋認証に成功しなければあけられない。

PUEの目標値は1.5

写真4●新棟屋上にある太陽光パネル
写真4●新棟屋上にある太陽光パネル
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写真5●カーテンなどを使ってホットアイルとコールドアイルを作る
写真5●カーテンなどを使ってホットアイルとコールドアイルを作る
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写真6●館林システムセンターの統合管制室
写真6●館林システムセンターの統合管制室
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 環境配慮の目玉は、太陽光発電パネルを2種類設置していることだ(写真4)。パネルの面積は合計で700平方メートルで、50kW程度を発電可能だ。発電した電力は照明や空調に使う。

 また外気を利用する「フリークーリング」の仕組みも取り入れた。外気温度が10度以下になった場合、空調機に送る冷却水を外気で冷やす。空調機による消費電力を削減できる。

 サーバー室内では、IT機器の吸気口と排気口の向きをそろえてホットアイルとコールドアイルを作り、冷却効率を高める(写真5)。ラックには温度・風速センサーなどを取り付け、温度や風量を計測。さらに分電盤の中に電力測定機を設置し、ラックごとの消費電力を把握できるようにした。

 これらの計測データは、富士通がこの新棟のために開発した「省エネ運転マネジメントシステム」で集計・分析する。データセンターのエネルギー利用効率を示す「PUE(Power Usage Effectiveness)」や、空調設備の効率性を示す「COP(Coefficient Of Performance)」などの値をグラフ表示する。同社が目指すPUEは1.5だという。

 新棟、旧棟にあるすべてのIT機器と設備は、旧棟内にある統合管制室で集中管理する(写真6)。富士通は新棟建設に投じた費用を明かしていない。石田センター長は「データセンターへの投資を回収するまでの期間は通常5年程度だが、もっと早く回収できる見込みだ」と話す。