総務副大臣の内藤正光氏は2009年11月18日,VHF帯ローバンドを使う携帯端末向けマルチメディア放送について,「私個人としては,色々な問題意識を持っている」と述べた。放送事業者向けのイベント「NAB東京セッション」での講演の際に述べた。内藤氏は2009年10月26日の本誌の取材において,VHF帯ローバンドを使う携帯端末向けマルチメディア放送について「私見を述べさせていただくと,ビジネス・モデルの点でまだ納得できないところがある」としていた(関連記事を本誌2009年11月2日号および同年11月9日号に掲載)。今回,多くの放送関係者がその発言に注目していたが,改めて関係者の前で自らの考えを表明する形になった。

 内藤氏の問題意識の一つは,VHF帯ローバンドを使う携帯端末向けマルチメディア放送の端末が普及するかどうかにある。内藤氏はまず,VHF帯ハイバンドに対応する端末について,「この周波数を使う携帯端末向けマルチメディア放送には携帯電話事業者(系の事業者)が参入する」ことや,携帯電話の周波数により近いことを指摘したうえで,「オペレーターである携帯電話事業者がメーカー各社に対して『ここまで周波数カバーする端末を作ってくれ』と言えば,携帯電話機で放送番組を視聴できるようになる」と述べた。一方,VHF帯ローバンドを使う携帯端末向けマルチメディア放送については,「携帯電話の周波数と離れ過ぎており,携帯電話事業者が参入するわけではないので,『携帯電話機の対応周波数をここまで持って来い』というのはなかなか難しい」とした。

 このほかに,「VHF帯ローバンドを使う携帯端末向けマルチメディア放送は全国を複数ブロックに分ける。1つの放送ブロックが大きい。本当にスポンサーが付くのか。ビジネス・モデルとして成り立つのか」「私たちとしては,携帯端末向けマルチメディア放送として大々的に電波を明け渡すのだから,デジタルを最大限活用したサービスをして欲しい。しかしAMラジオ放送事業者はこれまでと同じようなサービスをしたいというところが多い。個人的には『どうなんだろう』と思う」と述べた。

 こうした事情から,VHF帯ローバンドを使う携帯端末向けマルチメディア放送については,「もう一度仕切り直しをするかもしれない」とした。「電波の有効利用に加えて,通信と放送の融合にふさわしい電波の利活用をお願いしたい。さらにいうと,日本の情報文化をもっと発展させたい。そのような思いでVHF帯ローバンドについて検討を進めたい」という。