写真1●米O'Reilly Media創業者兼CEOのTim O'Reilly氏
写真1●米O'Reilly Media創業者兼CEOのTim O'Reilly氏
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写真2●「インターネットOS=データOS」とO'Reilly氏
写真2●「インターネットOS=データOS」とO'Reilly氏
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 「インターネットの“インテル・インサイド”,それはWebの巨人が囲い込むユーザー・データだ」。2009年11月17日(米国時間)の「Web 2.0 Expo New York 2009」基調講演に登壇した米O'Reilly Media創業者兼CEOのTim O'Reilly氏(写真1)は,Webサービス事業者によるユーザー・データの囲い込みをこう表現し,「1990年代後半のWebブラウザ戦争と同様に“醜い”争いだ」と斬って捨てた。

 かつてオープン化の象徴だったインターネットは,米Googleや米Facebookのような大規模サービスによる寡占が進んでいる。「インターネットOSの本質はデータOS。ユーザーのデータは囲い込まれ,インターネットから遠ざけられる」とO'Reilly氏は分析する(写真2)。

 例えばWebブラウザにプラグインする「各種ツールバーはURLを隠ぺいし,Facebookはインターネットへのリンクに警告を出す」(O'Reilly氏)。端末となる携帯電話機もその一つで「iPhoneはApp Store経由でなければアプリケーションをインストールできない。信じられないことだ」とO'Reilly氏は嘆く。

ユーザーにメリットを生まない垂直統合は止めよ

写真3●O'Reilly氏がGoogleほかに送るアドバイス
写真3●O'Reilly氏がGoogleほかに送るアドバイス
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 しかしO'Reilly氏は,こうしたクラウド・サービスの寡占は「多くのユーザーにとっては良いこと。Googleが“悪”なのはこの場(基調講演の会場)だけ」と皮肉る。「(Googleと同じTele Atlas地図を使う)iPhone向けカー・ナビゲーション・ソフトは99ドル。同様の機能を持つGoogle Mapsは無償だ」(O'Reilly氏)。

 Googleのユーザー・メリットを認めたうえで,O'Reilly氏は垂直統合への疑念を改めて提示。「小さなサービスがゆるやかに連携するのがインターネットOSのあるべき姿」とし,Googleを例に「Amazon.comに似たショッピング・サーチのGoogle Product Search(旧Froogle),PayPalと同じ決済サービスのGoogle Checkoutなどによる後追いは,ユーザーにとってユニークな価値を生まない。このことを忘れたとき,Googleは敗北するだろう」と予測してみせた(写真3)。

尖ったサービスの疎結合こそインターネットのあるべき姿

写真4●Webサービスの「一人勝ち」を指輪物語の「One Ring to Rule Them All」という一節で表現
写真4●Webサービスの「一人勝ち」を指輪物語の「One Ring to Rule Them All」という一節で表現
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 ユーザーに対して圧倒的なメリットを提供するクラウド・サービスの巨人が他のサービスを圧倒する一方で,それ以外の企業や開発者はどう生き残ればいいのか。O'Reilly氏は「一人勝ち」と「サービスの疎結合」がルールだということを理解したうえで,尖ったサービスを核に巨大クラウドと連携するのが得策とする(写真4)。

 最後にO'Reilly氏は,ニューヨーク市立大学准教授でブロガーのJeff Javis氏の「“Do what you do best. Link to the rest.”(ベストを尽くせることを成し,それ以外とは連携せよ)」という言葉を会場に投げかけ,講演を締めくくった。