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 「クラウドコンピューティングでは、パフォーマンスが劣化するという重要な部分が多くの人に理解されていない」ーー。アカマイ・テクノロジーズ創業者兼チーフ・サイエンティストでマサチューセッツ工科大学教授のトム・レイトン氏は2009年11月17日、同社が開催した技術説明会でこう主張した(写真)。クラウド環境ではアプリケーションを物理的に遠く離れたデータセンターに置く。ネットワーク経路上の遅延やパケットロスによって、アプリケーションのレスポンスが悪化するというのだ。

 データセンターへのアクセスではインターネットを利用するが、エンドユーザーはその経路を指定できない。このため、遅延が大きかったりパケットロスが多かったりする可能性がある。こうしたネットワークでは、Webサイトに埋め込まれたオブジェクトの転送に時間がかかったり、パケット再送の多発によるレスポンスの低下が起きがちだ。「Amazon EC2上がアプリケーションを動作させて検証したところ、北米からアクセスするとレスポンスは8秒だが、アジアからだと59秒かかった」(レイトン氏)とクラウドの性能問題の実例を紹介した。

 これを解決する技術として、レイトン氏はアカマイが提供する「ダイナミック・サイト・アクセラレータ」をアピールした。アカマイは全世界のインターネットサービスプロバイダのネットワーク上に合計5万6000台のサーバーを設置している。これらのサーバーにプロキシサーバーと似た役割を持たせることで、クラウド上のアプリケーションの性能を向上させるとする。

 具体的には、エンドユーザーに最も近い場所にあるアカマイのサーバーと、データセンターの最寄りにあるアカマイのサーバーを利用する。アカマイのサーバー間で通信品質の良い経路を独自に設定し、さらに独自プロトコルで情報を高速に転送する。このほかデータのキャッシュ技術なども利用して、エンドユーザーは近い場所にあるサーバーと通信する場合に近いレスポンスでクラウド上のアプリケーションを利用できるという。この技術を使うことで、前述したAmazon EC2の事例ではアジアからのアクセス時のレスポンスを15秒に短縮できたという。

 クラウド以外では「アカマイはHD(高精細)ビデオ、セキュリティ、モバイルコンピューティングに投資を集中している」(レイトン氏)という。また、「今後1年から1年半でIPv6に対応する計画だ」とも明らかにした。IPv4のみに対応したサーバーへのプロトコル変換機能も提供する予定である。