写真1●ガートナーリサーチ グループバイスプレジデントの山野井聡氏
写真1●ガートナーリサーチ グループバイスプレジデントの山野井聡氏
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●ガートナーリサーチ バイスプレジデントの堀内秀明氏
写真2●ガートナーリサーチ バイスプレジデントの堀内秀明氏
[画像のクリックで拡大表示]
写真3●ガートナーリサーチ バイスプレジデント 兼 最上級アナリストの亦賀忠明氏
写真3●ガートナーリサーチ バイスプレジデント 兼 最上級アナリストの亦賀忠明氏
[画像のクリックで拡大表示]

 ガートナージャパンは2009年11月11日,CIOおよびITプロフェッショナル向けイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2009」を開催した。基調講演に登壇したガートナーリサーチの山野井聡氏(グループバイスプレジデント,写真1),堀内秀明氏(バイスプレジデント,写真2),亦賀忠明氏(グループバイスプレジデント 兼 最上級アナリスト,写真3)の3人は,「世界同時不況から1年が経過し,企業はコストカット/リスクヘッジの“守勢”から,ビジネス成長/リスクテイクの“攻勢”への転換を求められている。今こそ,この1年間のIT支出最適化の経験を,次の成長への原資創出へ生かすときだ」と述べ,日本企業のITリーダーへ向けて2010年の活動指針を提言した。

 まず山野井氏は,「日本企業の成長回帰のためにはグローバル化が重要である」とした上で,「海外現地法人におけるIT予算執行やIT製品の調達を本社主導で行っている企業は33%にとどまる」と指摘した。「現地法人のITがコントロール不能であることは,企業内ITのグローバル化が遅れている証拠である」(山野井氏)。

 ITシステムのグローバル化が遅れている一方で,人材のグローバリゼーションは進んでいる。山野井氏によると,日本のIT人材が約98万7000人であるのに対して,海外で日本企業向けの業務に従事する「対日IT人材」は約20万3500人である。「企業のグローバル化のためには,この対日IT人材をいかに活用するかだ」(山野井氏)。

 続いて,堀内氏は「“視界ゼロ”といわれる不透明な経営環境は今後も続く。この環境においては,変化を先読みする情報戦略を確立することが重要である」とした。変化を先読みするために,堀内氏が有効と考えるのは社内にBICC(ビジネス・インテリジェンス・コンピテンシー・センター)を設置することだ。

 BICCとは,BIツールの活用方法や統計学などの専門知識を持ったスタッフで構成する組織のことである。「調査によると,BIの活用は4年連続で企業の優先課題の第1位である。4年間ずっと1位のままなのは,重要性を認識しながらもBIで収集した情報を使いこなせずに,戦略に役立てられてないためだ」(堀内氏)。この問題を解決するためには,企業内にBIツールを支える専門組織を設置することが有効だと堀内氏は考える。

 最後に,亦賀氏は,先に山野井氏と堀内氏が言及したグローバル化やBICCを推進するためには「インフラが整備されていることが前提条件である」とした上で,「クラウド・コンピューティングが企業内ITインフラの最適化を加速させる」と述べた。すでに,多くの企業がITコスト削減の観点からデータセンター内のサーバー統合を進めている。亦賀氏は,今後のITインフラの変化について「今は,企業内ITインフラというとばらばらのサーバーを指していることが多いが,今後は一つのフレームワークを指すようになる。そして,10年後には,企業内ITインフラは,サービス提供型のプライベート・クラウドが一般的になるだろう」と述べた。