写真 質問に応じるCPRAの椎名氏(中央)。右は日本映画製作者連盟の華頂氏,左はJASRACの菅原氏
写真 質問に応じるCPRAの椎名氏(中央)。右は日本映画製作者連盟の華頂氏,左はJASRACの菅原氏
[画像のクリックで拡大表示]

 著作権関連の91団体は2009年11月10日,私的録音録画補償金制度の見直しについての記者会見を開催した。同日に私的録画補償金管理協会(SARVH)がデジタル放送専用の録画機(つまりアナログ放送は録画しない装置)の補償金を期限までに支払わなかった東芝を提訴しており,記者会見での発言はこれを踏まえた内容になった。

 実演家著作隣接権センター(CPRA)運営委員の椎名和夫氏は,「日本の私的録音録画補償金制度において訴訟が行われたのは初めて。これは節目となる出来事ではないかと思う」と今回の訴訟を位置付けた。さらに補償金制度の見直しに向けた議論についてもコメントし,私的録画補償金制度と私的録音補償金制度について,それぞれ当面の論点を挙げた。私的録画補償金制度の今後の論点としては,「補償金制度の機能停止を主張するのであればその代わりとなる実効的な方法を提案すべき」「ダビング10環境下で行われる複製について補償の必要がないと主張するのであれば,権利者が被る不利益がないことを証明する客観的なデータを示すべき」を挙げた。

 一方,私的録音補償金制度の論点として挙げたのは,「メーカーなどが主張する『コピー制限と補償の必要性』に照らせば,現在無制限に行われている音楽CDからのコピーにこそ『補償の必要性』が存在するといえるが,補償金制度の見直しに応じないのはなぜか」「時間が経過すればそれだけ権利者の不利益は累積拡大するが,そのことをどう考えるのか」である。

 日本映画製作者連盟事務局長の華頂尚隆氏は,デジタル放送専用録画機の補償金支払いに応じようとしないメーカー側の主張についてコメントした。メーカー側が,「デジタル放送専用録画機は補償金の対象になるか疑義がある」と主張していることに対し華頂氏は,「補償金制度についての意見や見解を述べるのは自由だが,自分たちの意見に基づいて現行法令を無視するような不当な行為をしていくということになると,『日本は本当に法治国家なのだろうか』と危機感を覚える」として,SARVHの提訴は当然という見解を示した。

 一方,日本音楽著作権協会(JASRAC)常務理事の菅原瑞夫氏は,デジタル放送専用録画機の補償金を支払わない東芝の行為について,「例えるならば,高速道路の無料化を主張する人が『自分はこういう主張なのだから高速道路の料金を支払わない』と言っていることとイコール」と述べた。今後については,「SARVHの提訴の行方を見守りたい。権利者団体としても全面的にバックアップしたい」とした。