組み込みソフト開発などを手がけるユビキタスは2009年11月10日,組み込みシステムの起動時間を短縮するミドルウエア「Ubiquitous QuickBoot」を発表した。Android端末を電源投入から1秒程度でアプリケーション実行状態まで復元できる。1秒台の起動速度は,「Android端末としては世界最速」(ユビキタスの川内雅彦代表取締役社長,写真1)だという。
QuickBootは,システムの起動時間を短縮する手法である「ハイバネーション方式」を改良したもの。ハイバネーション方式は,RAMに展開されたシステム状態をストレージに保存しておき,電源投入後にストレージからRAMに復元する手法だ。同方式は,システムの高速復帰手法として一部の機器に導入され始めているが,システム上のアプリケーションが使用するメモリ容量が大きくなるほど,ストレージからRAMへの読み出しに時間がかかるという欠点があった。
一方,QuickBootでは,システムの起動に必要なデータから優先的にRAMにコピーするため,アプリケーション側のメモリ容量が増大しても,起動に要する時間は変化しない。同社 開発部長の橋本健一氏は,QuickBoot搭載のAndroid端末を使ったデモを披露し,3Dアプリケーションが動作しているシステムでも電源投入から約1秒で起動することを示した(写真2)。
「電源を完全に切ると,再び起動するまでに時間がかかりすぎるという理由から,多くの電子機器はスタンバイ状態で放置され,無駄な待機電力を使っている。QuickBootは,家電の待機電力削減に寄与し,ひいては地球温暖化対策に貢献するだろう」(川内代表取締役社長)。同社は今後,協力企業の製品にQuickBootを先行導入して最終試験を行う予定だ。正式発売は2010年になる見込みだという。