マジカジャパンは,同社が考案し無償配布しているエンドユーザー向け業務分析カード「マジカ!」の新バージョンを2009年末か2010年初頭に公開する。同社が2009年11月9日開催したイベント「マジカカンファレンス2009」で発表,同イベントでは福岡県大野城市での活用事例なども報告された。
「マジカ!」は,1枚に1業務を書き込み,並べていくことで,ITや業務分析の知識がないエンドユーザーでも業務フローを作成できるようにすることを狙ったカード。「はじまり」,「はたらく」,「わたしへ」,「あなたへ」などのカードがある。いずれのカードにもエンドユーザーが親しみやすいようイラストが配してあり。2004年にマジカジャパン(当時の社名はスターロジック)が開発した。これまでに約1万5000ユーザーがダウンロードしたという。JA群馬電算センターなどで利用されている(関連記事「Java初心者のチームが挑む基幹系刷新プロジェクト(番外編)」)。
新しいバージョンでは「チェック」カード,「成果」カードが追加され,「何が達成されれば仕事が完了したと言えるのかが明確になる」(マジカジャパン 代表取締役社長 羽生章洋氏)。また「イラストがよりかわいくなり,エンドユーザーが書きたくなるように,読みたくなるようにした」(羽生氏)という。
412業務,数千枚の業務フローを現場担当者が作成
「マジカカンファレンス2009」では,福岡県大野城市役所の自治経営課IT政策担当 森永希代美氏が,同市の保健・福祉業務,全412業務のフローをマジカ!で作成した経験を紹介した。「業務フロー図も検討したが,習得が難しかった。マジカ!であれば,現場の担当者が業務のあいまに作成できる」(森永氏)。実際に保健,福祉業務の各担当者が,合計数千枚におよぶマジカ!を作成した。こうして「業務を“見える化”したことで,共通する業務が明確になり,保険・福祉の相談窓口業務を共通化できた」(森永氏)。
業務分析に基づき共通化した上で,2008年度には福祉台帳管理システムを開発した。ベンダー依存を軽減しセキュリティを確保するため福岡県が提唱する電子自治体共通化技術標を導入(関連記事)。同市のシステムは2008年度の総務省 地域ICT利活用モデル構築事業に選ばれている。
6時間の打ち合わせで業務フロー
ヌーラボ 代表取締役社長 橋本正徳氏は,同社が構築した,病院受付システム,カルテシステムなどの開発でのマジカ!利用経験について紹介した。同社は,病院の担当者にマジカ!を書いてもらうことで「6時間の打ち合わせで業務フローを作成できた」(橋本氏)という。
アプリケーション自動生成ツールと組み合わせる
またクエステトラ,ワディット,フライトシステムコンサルティングが,それぞれのツールやサービスとマジカ!を組み合わせたシステム構築手法について紹介した。
クエステトラのQuestetra BPM Suiteは,プロセスを示すアイコンをマウス操作でつないでいくことでプロセスを定義できるWebベースのBPM(ビジネスプロセス管理)ソフト。同時処理プロセス数10件まで無償で利用できる。
ワディットのKailasは,「Webブラウザ上で業務フローを定義するだけでアプリケーションが作成できるフレームワーク」(ワディット 和田正則氏)である(YAPC::Asia 2009での発表資料)。
フライトシステムコンサルティングは自治体の調達業務支援などを手がけている。マジカカンファレンス2009で同社は「マジカジャパンと共同で,自治体向けにマジカ!を使ったコンサルティングを提供していく」(フライトシステムコンサルティング 杉山隆志氏)ことを発表した。
◎関連リンク
◆マジカ!公式サイト