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 「全国約1万4200台のATM(現金自動預け払い機)ネットワークを当行は持っている。ATMには従業員を配置していないこともあり、ATM自体が顧客にとって便利で信頼できるものでないと使ってもらえない。顧客に満足してもらえるよう、徹底して改善を続けている」。セブン銀行の安斎隆代表取締役社長(写真)は2009年11月6日、NECが開催する「iEXPO2009」の基調講演に登壇し、このように語った。

 安斎社長は「どのようなATMを作ればいいかは、顧客にアンケート調査をしても分からない。自分たちが顧客の立場になって、『この機能を使ったら、こういう気持ちになるはずだ』ということを真剣に考えることが重要だ」と語る。さらに「自分たちで考え抜いた機能をメーカーのNECに実現してもらうよう要求する。技術者は最初は渋るものの、最終的には必ず満足のゆくものを作ってくれる。私は技術者を尊敬している」と続けた。

 セブン銀行のATMの特徴的な機能として、安斎社長は「顧客が提携金融機関のキャッシュカードを当行のATMで使った場合、その金融機関のATMと同じ画面が出る。全国どこのATMでも同じ画面が出るため、顧客には安心感があるはずだ。ATMが顧客と一緒に旅をしているようなものだ」と話した。

 このほか、セキュリティ面の機能強化として、暗証番号入力にタッチパネルを使わず、入力する手が見えないよう右側の奥まったボタンを配置していることや、画面の正面から少しでもずれると画面が見えないようにしていること、高性能なカメラを内蔵していること、などを挙げた。特にカメラについては「カメラを付けているATMはほかにもあるが、これだけ鮮明な写真が撮れるものはほかにないし、他行が追い付くのはなかなか難しいだろう。それだけの投資をしている」と自信を見せた。

 来年度の後半には機能を強化した第3世代のATMを投入するという。現在のATMは第2世代である。安斎社長は「NECに、徹底した省エネ化や、現金補充の効率を高めるよう求めている。内蔵カメラを二つにするなど、セキュリティ面もさらに強化する」と語った。

 セブン銀行が求められる信頼のレベルについて、安斎社長はこう話す。「セブンイレブンにおにぎりを買いに来た顧客は、たとえおにぎりがなくても『仕方がない、パンを買うか』と気分を悪くする程度で済む。だが、ATMに行ってお金がおろせなかったら顧客は怒る。顧客にとってATMの中にある預金は自分のものだからだ」。

 こうならないよう、セブン銀行は現金切れやシステムダウンを防止することに注力している。安斎社長はシステムダウンについて「我々のような新しい銀行は、システムダウン一つで信頼度が一気に低下する。特にネットワークのダウンはあってならない」と語った。

 これらの努力を積み重ねてきたが、「まだ完全な信頼を得られたとは思っていない。信頼を確立するのには何年もかかるが、崩れるときは一日で崩れる。今後も努力を続ける」(安斎社長)とした。