東京大学先端科学技術研究センターとソフトバンクモバイルは2009年11月5日、発達障害や知的障害を持つ子供の学習支援に役立つ携帯電話活用事例集を公表した。Webサイトからダウンロードできる。「携帯電話は多機能だが、使われていない機能が多い。それらが障害を持つ子供たちに役立つ」と、東京大学の中邑賢龍教授は携帯電話に着目した理由を説明する。

 携帯電話のどの機能が、どのような障害を持つ子供に役立つかを、事例を基に示す。自閉症で対人コミュニケーションが苦手な子供であれば、携帯電話の電子メール機能やメモ帳機能を使って意志の疎通を図る方法が有効だとする。

 文字を読んだり書いたりすることが困難な子供でも、携帯電話のキー操作なら可能なケースがある。文章読み上げ機能を利用する方法もあるという。聞き取りが困難な子供であれば、携帯電話の録音機能を使うとよいとしている。

 事例集ではこのような例を、99紹介する。携帯電話の機能別、障害別に整理して掲載する。このような携帯電話の有効な使い方を具体的に示すことで、全国に68万人いるとみられる障害を持つ小中学生の学校生活に役立てる。学習機会を増やし、社会参加を促進するのが狙いだ。

 「文章の読み書きができない、人とうまくコミュニケーションをとれないということで、将来を悲観する子供が多い。こうした状況を変えたい」(中邑教授)。東大の中邑教授とソフトバンクモバイルは事例集を3000部の冊子にし、セミナーなどに活用する。将来的には英語訳し、海外での配布も検討するという。

 事例集は、東大とソフトバンクモバイルが2009年6月に開始した「あきちゃんの魔法のポケットプロジェクト」の成果である。同プロジェクトでは、11の小中学校、に34台の携帯電話を貸し出し、事例を募った。