英BBCは2009年11月2日,パソコン向けを中心に提供している動画配信サービス「iPlayer」を,より多くのテレビ向け機器で利用できるようにするための標準化作業を進めていることを開発者向けブログで明らかにした。3方式で準備している標準iPlayerのうち二つを使って,2009年11月にも試験サービスを提供する方針だという。

 BBCはテレビ向けの標準iPlayer群(The standard iPlayer products on TV platforms)に関して,「MHEG-IC(MHEG-5 Interaction Channel)版」「HTML版」「Flash版」という三つの方式で標準化を進めている。

 ブログではMHEG-IC版について次のように解説している。MHEG-IC版がベースとしているMHEG-5は,テレビでインタラクティブな機能を開発/実現するために10年以上にわたって英国で利用されてきた標準規格。最近になって,Digital Television Groupがインターネットで配信される動画も取り扱えるよう機能を拡張したという。

 MHEG-5はデジタル衛星放送サービスの「Freesat」で採用されている。また,Freeview HD対応機器に使われている「DBook 6.1」規格にも統合されている。BBCはMHEG-IC版の標準iPlayerを使って,11月末にもFreesat対応機器向けの試験サービスを提供する見込みである。

 HTML版については,ネット接続されたテレビや周辺機器といった多くの機器でiPlayerサービスを利用できるようにすることを目的に標準化の準備を進めている。市場に受け入れられている標準規格に,必要に応じて実用的なAPIを組み合わせて利用する方法を選択したという。

 具体的には,インタフェースやメディア・プレーヤをHTML4.01,JavaScript 1.5,CSS2.1といった標準規格に準拠して開発する。一般的なHTML4に準拠したブラウザを搭載した機器であれば,HTML版標準iPlayerのインタフェース部分は動作するはずだという。

 コンテンツを再生するためのAPIには,動画や音声の再生用途としてW3CのHTMLワーキング・グループが検討中のメディア再生用APIを採用する。HTML5で音声と動画が標準サポートされた際には,今回利用するAPIは直接動作するようになる見込みだという。HTML版についても2009年11月に期間限定で試験的に提供し,取り組みの改善や有効性の検証を実施する予定である。

 もう一つのFlash版は,組み込み機器でも様々なコンテンツの見せ方が可能な点に着目して開発を進めている。Flash版の標準iPlayerは,Adobe Flash Lite 3.1向けに開発予定で,2010年4月に試験サービスを提供する予定という。

 BBCはこれまで,テレビで利用できるiPlayerサービスを,PlayStation 3やWiiといったゲーム機,およびケーブルテレビ事業者であるVirgin Mediaのセットトップ・ボックス(STB)向けに提供してきた。中でもVirgin Media向けのサービスは,2008年1月のサービス開始以来,2億本以上の番組が視聴され,パソコンや携帯機器向けを含む全iPlayerサービスの4分の1以上を占めるまでに成長しているという。

 今回の標準iPlayerは,より汎用的な機器を使ってテレビ画面でiPlayerを利用できるようにするものだ。テレビによる動画配信サービスの利用を一気に普及させるきっかけとなる可能性がある。

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