マイクロソフトの基礎研究組織「マイクロソフトリサーチ(MSR)」は2009年11月4日,産学連携プログラム「マイクロソフト アカデミック連携プログラム(英語名称:Mt. Fuji Plan)」を発表した。大学や公的研究機関での「共同研究」「人材育成」「学術交流」「カリキュラム研究」の4つを活動の柱とし,3年間で国内に数百万米ドルを投じる計画だ。

 マイクロソフトの樋口泰行代表執行役社長は,「日本は研究開発の考え方が閉鎖的。今回の産学連携強化により,日本のエンジニアが世界共通のプラットフォームで競えるように,アカデミックの分野をグローバル化していくお手伝いをしたい」と述べる。同プログラムの開始に合わせて来日した米マイクロソフト リサーチ担当 シニアバイスプレジデントのリック・ラシッド氏は,「MSRが研究活動に投じている資金の15%は大学機関で使われており,これまでも日本の大学との共同研究活動の実績がある。今回のプログラムは,これまでMSRが行ってきた産学連携活動の延長であり,より連携を強化するための取り組み」と語った。

 同プログラムの共同研究活動は,MSRの共同研究プロジェクト「CORE連携研究プロジェクト(Collaborative Research Projects)」を通して進める。同プロジェクトの学術顧問委員会 ディレクターである東京工業大学 大学院情報理工学研究科の古井貞煕教授によると,これまでに日本で50件以上の研究がMSRによってサポートされているという。「今回の連携強化により,MSRの研究と日本の特色ある研究が融合することで,世界をリードするような成果が得られるのではないかと期待している」(古井氏)。

 また,人材育成活動としては,学生インターンシップの受け入れや,「MSR日本情報学研究者賞」を活用した若手研究者の表彰など,これまでMSRが実施してきた産学連携の取り組みを継続していく方針だ。2009年度のMSR日本情報学研究者賞は,京都大学大学院情報研究科の五十嵐淳准教授と産業技術総合研究所サービス工学研究センター最適化研究チーム研究員の神谷年洋氏の2人が受賞した。表彰式は同日,慶応義塾大学の日吉キャンパスで実施される予定だ。

 新しい取り組みとしては,学術交流活動の一環で,MSRの研究者とアカデミック関係者との交流会「21世紀コンピューティングコンファレンス(21CCC)」を開催する。第1回目となる2009年度は,「3 Screens and 1 Cloud:Rethinking Computing ~コンピューティング新潮流~」をテーマに意見交換を行う。21CCCを,同日に慶応義塾大学で,11月6日に京都大学で行う。

 活動の4つ目の柱であるカリキュラム開発は,検索やデータ・マイニングなどコンピュータ・サイエンスの新分野に関する教育プログラムや教材を開発することを目的とする。MSRアジア 所長の洪小文氏は,「この取り組みは日本独自のもの。教育の質が高い日本のアカデミック界との連携によってこそ実現できる」と話す。

■変更履歴
公開当初は1段落目で「3年間で数万ドルを投じる計画」としていましたが,「3年間で国内に数百万米ドルを投じる計画」の誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2009/11/04 17:00]