写真●日経コミュニケーションの安井晴海副編集長
写真●日経コミュニケーションの安井晴海副編集長
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 10月28日~30日に東京ビッグサイトで開催されている「ITpro EXPO 2009」では,注目を集める話題のテーマごとにSpecialセッションを開催。その中の一つ「NETWORK Special」の基調講演に,日経コミュニケーションの安井晴海副編集長が「企業ネットワークの最新トレンド」と題して登壇した。

 講演では,日経コミュニケーションが実施した調査に基づいて,ユーザー企業のネットワークについての分析を披露。クラウド・コンピューティング,モバイル,シンクライアント,TV会議/Web会議,バースト対応サービスの5つをキーワードとして挙げた。

 クラウド・コンピューティングでは,SaaS,PaaS,HaaSまたはIaaSといった分類を紹介。サーバーの保守・管理費用の削減など,コスト最適化への期待から注目を集めているという。日経コミュニケーションの調査では,「将来利用したいと考えているサービスや製品」の中で1167社中246社が挙げており,昨年の13位から6位に躍進した。利用もしくは利用予定を尋ねたところ,業務アプリケーションやグループウエアなどのSaaSまたはASPが61.7%の回答を集めた。

 2つめのモバイルでは,すでに72.9%の企業がモバイル・データ通信カードを利用しており,外出先でネットワークを使うのはすでに一般的になっているという状況を紹介。「今はHSDPAを使ったデータ通信が増えているが,PHSもXGPで巻き返しを図ろうとしている」(安井副編集長)と今後の注目点を指摘した。さらに,オフィスの電話と携帯電話を連携させるFMC(Fixed Mobile Convergence)サービスも紹介。外出している社員の携帯電話があたかも社内の内線のような番号でかけられ,さらに通話が無料になることから“コスト最適化の切り札”として注目されているという。

 3つめのシンクライアントも,クライアント・パソコンの保守費用を削減しTCO(Total Cost of Ownership)の観点から相変わらず注目されているとした。日経コミュニケーションの調査では,1167社中432社が将来利用したいと回答しており,「サーバー仮想化」に次ぐ2位になったという。ただし,調査では「導入済み」との回答が11.9%にとどまっており,この理由として「導入コストが高いことがネックとなっている。TCO削減だけではユーザーの心に響かない」(安井副編集長)と指摘する。

 TV会議/Web会議も,やはりコスト削減の面から着実に浸透しているという。使っていると答えた企業は,昨年の43.4%から今年は47.7%に増加しており,「出張費や移動にかかる時間を削減できることが評価されている」と分析する。また,パンデミック対策でも注目されており,過去1年間で対策を実施した企業では43.8%と半数近くがTV会議/Web会議の導入を挙げたという。

 最後の5つめのキーワードとして挙げたのが「バースト対応サービス」だ。これは,NTTコミュニケーションズとKDDIが7月に始めたばかりの新サービスで,特定の通信だけ契約帯域を超えて物理インタフェースまで利用可能とするものである。コストを抑えながら,もしもの場合に備えるサービスとして注目されている。日経コミュニケーションの調査でも,まだサービスが始まったばかりだというのに,「ぜひ使いたい」と答えた企業が5.5%,「使ってみたい」と答えた企業が18.4%と,4社に1社が興味を示しているという数字を挙げ,今後の注目サービスとして指摘した。