写真●パネルディスカッションの様子
写真●パネルディスカッションの様子
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 3年後の情報システムの姿はどういうものか,その課題は何か---。「ITpro EXPO 2009」展示会2日目,有力なベンダー4社の論客が集まり,パネルディスカッションを行った(写真)。参加したのは,NTTデータの小林武博氏(システム方式技術ビジネスユニット 第三技術統括部 プラットフォーム技術担当 部長),新日鉄ソリューションズの南悦郎氏(技術本部 システム研究開発センター所長),日本ユニシスの廣田博美氏(ICTサービス本部 サービス商品企画部 部長),野村総合研究所の八木晃二氏(基盤ソリューション事業本部 基盤ソリューション事業一部 部長 クラウド事業推進室 主席)の4人。モデレータは日経コンピュータの森山徹副編集長が務めた。

 パネルでは,まず森山副編集長が「所有から利用へ」「垂直から水平へ」「分散から統合へ」という,ITプラットフォームを巡る三つのトレンドを提起した。

 NTTデータの小林氏は,特に「垂直から水平へ」の流れに注目。「業務別,システム別に構築してきた情報システムのプラットフォームを統合する流れが今後3年ほど続く。ただし,すべての業務システムで水平化・統合化が進むわけではなく,高い信頼性が求められたり,自社ビジネスの競争力の源泉となったりするシステムはオンプレミスとして残る」という見方を示した。

 新日鉄ソリューションズの南氏は「所有から利用へ」の流れに言及した。「利用の形態が増えていくと思うが,非クラウドのシステムも依然存在はする。3年後にはパブリッククラウド,プライベートクラウド,オンプレミスのシステムが混在し,条件に応じて適した形態を使い分けるようになるだろう」と見る。

 NRIの八木氏は,ユーザー企業のCIOを対象に同社が実施しているIT活用実態調査の結果を紹介した。「IT投資の半分が基盤関係への投資となっている。ITプラットフォームを考えることは企業システムを考えるうえでの最も重要なテーマと言える」。ただし,経営企画部門を対象に実施した別の調査結果では全体の3分の1が,過去10年間のIT投資の効果について「満足していない」という結果も出ている。「経営戦略の観点からも,ITプラットフォームを考えていかなくてはならない」と問題の重要性を指摘した。

 そのプラットフォームを考えるうえで外せないのが,クラウドコンピューティングである。各社はクラウドをどう見ているのか。

 日本ユニシスの廣田氏は,ITガバナンスの視点からクラウドへの注目が高まっていると見る。「日本ではJ-SOXが象徴的だが,ITガバナンスをきちんとやろうとするとマンパワーとコストがかかる。(クラウドはそれらを削減できると考えられるため)クラウドへの期待と戦略が高まっている」。

 クラウドに一定の期待があることは各氏とも共通しているが,課題も多い。廣田氏はクラウドビジネスを展開する中で,ユーザー企業から寄せられた要望をいくつか紹介した。「実際に話を詰めていくと,高速回線を使えないのか,(ローカルIPなど)既存のネットワーク環境を変更せずに済ませられないか,システム移行は問題なくできるのか,WORM(Write Once Read Many)など多様なストレージが使えないのか,といった声が出てくる。ベンダーとしてこれらの要望に応えられるようなサービスを用意したい」と語った。