写真●右から順に,NECの赤津氏,デルの諸原氏,日本IBMの関氏,日本HPの上原氏,日立製作所の木下氏,富士通の吉田氏,レノボ・ジャパンの内藤氏
写真●右から順に,NECの赤津氏,デルの諸原氏,日本IBMの関氏,日本HPの上原氏,日立製作所の木下氏,富士通の吉田氏,レノボ・ジャパンの内藤氏
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 「ITpro EXPO 2009」展示会初日,ICT業界の大手プレイヤーからパネラーを募り,最新のテーマを議論する「ICTパネル討論会」の第1回が公開された。テーマは「Enterprise Platformの明日~ビジネスに貢献する情報システム基盤を求めて」。大手コンピュータ・メーカー7社からキーパーソンが参加,情報システム基盤として今後何を提案し,提供していくかを語った。

 パネリストは,NECの赤津素康ITプラットフォームビジネスユニット コンピュータソフトウェア事業本部長,デルの諸原裕二執行役員ソリューション・サービス・デリバリー本部長,日本IBMの関孝則テクニカル・セールス・サポート技術理事,日本ヒューレット・パッカードの上原宏エンタープライズストレージサーバ事業統括本部BCSビジネス本部長,日立製作所 情報・通信グループの木下佳明経営戦略室副室長,富士通の吉田浩SOP開発推進室室長代理,レノボ・ジャパンの内藤在正取締役副社長 研究・開発担当の7氏である(写真)。司会進行は日経コンピュータの谷島宣之編集長が務めた。

 冒頭,谷島編集長はパネル討論の主旨について,「Enterpriseは企業という意味で使われているが,これは派生的なもの。元は進取の気性とか,非常に野心的な取り組み,といった意味だ。不景気のなかでも,多くの企業に新しい企てをしてほしいと思っている。今日は,そのためにどのような基盤を用意するのかを語り合いたい」と説明した。

 パネラーは,谷島編集長のリクエストにより,プレゼンテーション資料を1枚ずつ用意。7人が順次,各社の提案する情報システム基盤や今後1~2年先までのビジョンを披露した。

 富士通の吉田氏は,同社のクラウド・サービスへのアプローチを説明。「パブリック・クラウドとプライベート・クラウドは,企業のなかで適材適所で組み合わせられるようになっていくだろう。将来は社会インフラにも浸透していく。企業向けに,ハードからサービスまで広く提供している立場から言えば,その時にも支えられるよう,高信頼のクラウドを作れる基盤製品やサービスを提供していきたい」。

 次に日立製作所の木下氏が,2009年6月にクラウド関連ソリューション「Harmonious Cloud」を同社が発表するに至った背景を説明した。「顧客が心配するのは,データがとにかく大量になっていること。ITで効率化したいが,インフラを自身で持つのは重いというのだ。この悩みに,クラウドがぴったり合致した」。

 木下氏は日立のクラウド提供のアプローチについて,「ご存じのように,日立は電力,交通,金融など社会インフラにつながるものを提供している。それらをクラウドでやるとどうなるか。クラウドの提供先として既に,電力システムや,交通の主軸の一つである列車運行システムなどを考えている。社会インフラシステムにどんどん使われていくクラウドが求められている」。

 日本IBMの関氏は,今後求められる情報システム基盤について,技術的な側面から同社の提案内容を説明した。「目指すのは,クラウド的にリソースを提供する世界。当社はDynamic infrastructureと呼んでいる。数年前から続けていることだが,提案内容は一番シンプルに,サーバー統合しましょうということだ」。

 サーバー統合は第1段階だという。「次は,アプリケーションをまたいで使えるリソースプールの実現。その後にはもっと動的に社内外にリソースを求められるようになる。これにより,7~8割が運用コストという現状を変えていく」。ここで重要なのは,アプリケーションや社内外をまたいでリソースをコントロールできるツールだという。

 NECの赤津氏は「クラウドはユーザー企業にとって,パラダイム・シフトだ。ユーザーは,今のパブリック・クラウドで基幹システムが動くとは多分思っていない。だが,ユーザーがクラウドを志向しているときには,我々も用意しなくてはならない。また,ユーザーがクラウドに求める柔軟さや,安心感,快適さは,基幹システムの普遍的な要件であり,当社も,研究所で開発した障害対策の技術を製品化するなど,追求し続ける」。

 日本HPの上原氏は,まずは同社自身が理想のシステムを追求した経験が,今後役立つとした。「合併を繰り返して社内インフラがぐちゃぐちゃになり,世界に85ものデータセンターを抱えていたHP自身が実験台になって,理想的なシステムを追求し,大きな成果を上げた」。

 ただし,万能のソリューションがあるわけではないという。「体験から分かったことは,できるところから変えていくのが正解なのではないか,ということだ。さまざまなサーバーやストレージを同じ方法で管理できる製品など,自社の体験に基づいた開発もしているが,やはり適材適所で考えていくしかない」(同)とした。

 デルの諸原氏は「既存システムの維持コストは7割と言われているが,当社の調査では9割という顧客もいる。これをいかに削減して,その分を新しいビジネスに振り向けてもらうかだ。当社は,生産性を高めるクライアント・コンピューティングや,サーバーやストレージの最適化支援といったサービスも提案している。また,米国に続き,日本でも運用管理に特化したSaaSの提供を計画している」と語った。

 PCの開発を担当するレノボの内藤氏は,社員一人ひとりの視点から,情報システム基盤におけるモビリティの重要性を訴えた。「社員をいかにオフィスから解き放つか。オフィスにいなくても,オフィスにいるときと同じかそれ以上の生産性を出せるか。モビリティによって,例えば,仕事に使う時間と家族のために使う時間をもっと最適化できる。国としての競争力にも関係してくるはずだ」と指摘した。