写真●日経コンピュータの木村岳史副編集長
写真●日経コンピュータの木村岳史副編集長
[画像のクリックで拡大表示]

 東京ビッグサイトで開催中のITpro EXPO 2009展示会では,旬のテーマごとにパビリオンを設置。その1つ「クラウド・コンピューティング パビリオン&SaaS Showcase」内のシアターにおいて10月28日,日経コンピュータの木村岳史副編集長が「クラウド時代のIT投資を考える」と題した講演を実施した(写真)。

 木村副編集長は,クラウドがIT業界の大きな潮流でパラダイム・シフトであることをまず認めながら,決して新しい概念ではなくベンダーや通信業者などから何度も出てきている概念の一環と指摘する。それが,仮想化など技術の進歩により,ようやく現実になってきたものというとらえ方だ。

 その一方,「便利な言葉で,なんでもかんでもクラウド」にしていることを危惧。クラウドとして扱うための条件として,コスト削減とスケーラビリティの2つを挙げた。その上で,クラウドのタイプを分類した。

 コンシューマ向けクラウドと企業向けクラウドのうち,企業向けのものは「プライベート・プラウド」と「パブリック・プラウド」に分けられ,プライベート・クラウドはさらに「自社運用」と「アウトソーシング」に分けられるという。このうち,自社運用は「仮想化の技術を使ったサーバー統合に過ぎない」と語る。多数のグループ企業をもつ大企業でないとコスト的なメリットは薄いとした。アウトソーシングのプライベート・クラウドは「クラウドと呼んでいるだけで通常のアウトソーシングと変わらない」とバッサリ。また,パブリック・クラウドも「SaaSはASPとほぼ同義」だという。

 そのようにクラウドを定義した上で「すべての情報システムはクラウドへ向かう」とし,ユーザー企業にとって結局は「持つか持たざるかの選択」と指摘する。基幹系の場合は,「自社運用をすると仮想化というレイヤーが追加されるため当面の負荷は増大する。アウトソーシングでは事業者を信頼できるか,マルチテナントを容認できるかが問題」と語る。情報系/コミュニケーション系の場合は,運用・保守の負荷は解消するが「多くのユーザーで新規か,既にアウトソーシングしている」業務なので効果は限定的とする。

 結論として,「クラウドの目的は1にも2にもコスト削減」だが「中小規模の企業では逆にコスト高」になると,クラウドが単純にコスト削減につながらない場合があると釘を刺す。その上で,「例えば企業のシステム部門がサービス・プロバイダになる」ことも想定した,より広い視野でIT投資を実施することが重要と講演をまとめた。