2009年10月28日,「ITpro EXPO 2009」の会場で,グリーンITユーザーアワードの発表と表彰式が行われた(写真1)。この賞は,ITを活用することで,ビジネスの成長と環境負荷の削減を実現した企業を表彰するもので,今回は6件が選出された。
最優秀賞のグランプリを獲得したのは,三井不動産レジデンシャル(写真2)。“CO2見える化”マンションを大規模に展開し,家庭におけるエネルギー消費削減を支援する取り組みが高く評価された。
グランプリの発表後,会場では審査委員長を務めた東京大学名誉教授の安井至氏による講評のビデオを上映。その中で安井氏は,グランプリ選出の理由を次のように語った。
「審査のポイントは大きく分けて3つ。本業であるビジネスの成長のためにITを活用していること,クライアント(商品やサービスのユーザー)を広く巻き込んだ取り組みであること,そしてCO2削減効果を見える化していることだ」。そのうえで安井氏は,「三井不動産レジデンシャルの取り組みはこの3つの要件をほぼ満足しており,家庭のエネルギー消費削減の今後のあるべき方向性を示している」。
準グランプリを獲得したのは,スペースフィッシュ(写真3)。衛星の観測データを基にカツオ,サンマ,マグロなどの漁場を予測し,インターネットや衛星通信を使って情報を配信するサービスを提供する会社だ。漁業の効率化と共に,燃料消費に伴うCO2排出削減を実現した点が評価された。
この上位2つの賞のほか,特別賞2件,プロジェクト賞とアイデア賞が各1件選出された。
特別賞の1件目は,エフピコ(写真4)。配車計画/倉庫管理システムの精度を高めることによって,物流コストとCO2排出量の大幅削減に成功した。また,電子帳票システムやTV会議,Webカタログなど,IT部門・環境部門・ユーザー部門が緊密に連携して施策を実現する手法は,多くの企業のモデルになり得ると,審査委員の支持を集めた。
もう1件の特別賞は,朝日酒造とJA越後さんとう(共同受賞,写真5,写真6)。新潟県有数の蔵元である朝日酒造は,地元農協のJA越後さんとうと共同で,衛星リモートセンシングによる酒造米の品質の見える化に着手。地域の生産農家の協力もあり,米の品質の底上げと,収穫時期の調査業務の大幅な合理化を実現した。次世代の農業のビジネスモデルを提示しているというのが受賞理由である。
プロジェクト賞は,グリーン東大工学部プロジェクト(写真7)。東京大学を舞台に,40の企業・団体が集結して省エネ技術の実証実験を行うという取り組みで,機器の種類やメーカーの壁を越えて,一つのシステムで空調,照明,機器の稼働状況の把握や遠隔制御を可能にした。他の大学や研究所への横展開を期待しての受賞となった。
アイデア賞には,本田技研工業が選ばれた(写真8)。テレマティクス・システムの「インターナビ」を活用し,ハイブリッドカーのインサイトから燃費データを吸い上げ,Webサイト上で低燃費運転を行っているドライバーをランキング表示する「エコグランプリ」を開催。エコドライブに取り組む仲間が集い,楽しみながらスキルアップできる仕組みを考案した企画力が評価された。