写真1●キヤノンのブースの様子。さまざまな大きさの2次元マーカーがたくさん壁に貼られているのは,HMDの視界に1個は必ず入るようにするため。
写真1●キヤノンのブースの様子。さまざまな大きさの2次元マーカーがたくさん壁に貼られているのは,HMDの視界に1個は必ず入るようにするため。
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写真2●キヤノンのHMD。目の前に両手でかざすようにして使う。右奥の小型液晶ディスプレイに表示されているのがCGの恐竜。HMDにあるボタンを操作することで,トリケラトプスの皮膚の色を変えたりできる。
写真2●キヤノンのHMD。目の前に両手でかざすようにして使う。右奥の小型液晶ディスプレイに表示されているのがCGの恐竜。HMDにあるボタンを操作することで,トリケラトプスの皮膚の色を変えたりできる。
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 ITpro EXPO 2009の展示会場にある「ネットワーク最前線」のキヤノンのブースでは,コンピュータ・グラフィックス(CG)の恐竜を3Dで見られる。この恐竜のCGは,今年7月に東京・上野の国立科学博物館で1週間だけ展示されていたものだ。

 ネットワーク最前線コーナーでは各社のAR(拡張現実)技術やサービスが展示されている。キヤノンの展示もその一つだ。同社ではこの技術を「MR」(複合現実感)と呼んでいる。

 「MRとARは似ている。だが,ARは現実を仮想空間に拡張する技術であると考えられている。一方のMRは現実空間と仮想空間をシームレスにする技術であり,ARよりもカバー範囲の広い言葉だ」(キヤノン イメージコミュニケーション事業本部 レンズ事業部 MR開発推進プロジェクト 麻生 隆チーフ)。

 恐竜のCGは国立科学博物館と放送大学が作成したもの。キヤノンのヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)を目の前にかざして壁や床に配置した2次元マーカーを見ることで,恐竜が視界に立体的に出現する。HMDにはカメラが仕込まれており,目前の現実の映像とCGを合成して表示する。実際に展示してある恐竜の標本の一部からCGのトリケラトプスの頭部が浮き上がってきてユーザーに話しかける。恐竜が出すクイズに対してHMDにあるボタンで回答するという趣向も凝らされている。

 ブース内にはたくさんの2次元マーカーが貼られている。1個以上の2次元マーカーをカメラが補足するだけで,恐竜との位置関係を割り出して表示できる。複数の2次元マーカーが貼られているのは,HMDを付けたユーザーが見ている方向を変えても恐竜の位置を割り出せるようにするためだ。ユーザーの体勢によっては2次元マーカーが視界に入らなくなることがある。このような場合はHMDに内蔵したジャイロ・センサーを使ってCGの位置情報に補正をかける。

 会場では,HMDをかぶらなくても恐竜のCGが見られるように大型ディスプレイでも表示している。だが,3Dで立体的に見られるのはHMDを通した場合だ。没入感がある。

 キヤノンのMR技術は,今週末に開催される東京農業大学の学園祭でも利用される予定。そこではイネの成長過程のCGが公開されるという。