写真●デルのジム・メリット代表取締役社長
写真●デルのジム・メリット代表取締役社長
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 「多くの企業のCIOが抱えているジレンマは、業務の生産性を向上させるために導入してきたITのコストがかさんできたことで、ITを使ったさらなる生産性向上が図れなくなっていることだ」。デルのジム・メリット代表取締役社長(写真)は10月28日,「ITpro EXPO 2009」の特別講演でこのように指摘した。

 メリット社長は「さらなる生産性向上を阻んでいるのは既存ITの運用・保守コストだ」と続ける。運用・保守コストを下げる手段として、メリット社長が掲げたのは、「クライアント環境の効率化」「エンタープライズ・システムの効率化」「クラウドサービスの利用」の三つのソリューションである。

 「クライアント環境の効率化」とは、新規導入したパソコンに業務で利用するソフトをインストールしたり、追加したりする作業や、社員の部署異動に合わせてパソコンを異動したときに利用できるようにする作業などを効率化することである。

 これらの作業を削減する策の具体例として、メリット社長は、インテルが開発した一括管理技術「vPro」を搭載したパソコンを導入することで、社内のパソコンを一括管理する仕組みを取り入れたり、ヴイエムウェアの仮想デスクトップ基盤「VM VDI」といった技術を使った仮想デスクトップの導入を挙げる。「仮想化はサーバーで特に注目されているが、デスクトップに採用すれば、クライアント環境の整備や維持のコストを4割削減できる」と、メリット社長は話す。

 「エンタープライズ・システムの効率化」は、サーバー仮想化技術を採用してハードウエア資産を減らしたり、データの利用頻度や重要度に応じて、格納するストレージを使い分けたりすることで実現する。

 メリット社長は、サーバー仮想化技術を採用した事例として、製薬メーカーのツムラの取り組みを紹介。「サーバーの台数を120台から12台に削減でき、1台当たりのサーバーのシステムリソースの使用率を6割から9割に引き上げることができる。サーバー仮想化はやる価値がある」と、メリット社長は強調する。

 最後の「クラウドサービスの利用」では、2年前から米デルが実施しているクラウドサービスの成果を紹介した。同社のクラウドサービスでは、クライアントPCを含めたインフラを提供するクラウドでは、5000社が利用している。ある企業では、このクラウドを利用することで、運用管理の工数を9割近く削減できたという。

 メリット社長は「運用・保守コストの削減につながるこれらのソリューションを提案することで、企業がITに投資できるように支援していきたい」と締めくくった。