写真●アクセンチュアの程近智代表取締役社長
写真●アクセンチュアの程近智代表取締役社長
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 東京ビッグサイト(東京都江東区)で10月28日に始まった「ITpro EXPO 2009」で,アクセンチュアの程近智代表取締役社長が「2010年への準備:次の10年に重要なIT視点」と題して講演した。今後10年に重要になると見られる七つの視点を踏まえたうえで,「企業のIT部門は今後,自社運用するIT基盤とクラウドなど外部のITサービスを柔軟に組み合わせて提供するプロデューサーになるべきだ」と主張した。

 500人収容の会場が満席になるなかで,程社長はまず,今から10年前の1999年前後にIT業界でどのようなトレンドが生まれたかを整理してみせた。例えば,米国では米アマゾンや米グーグルなどが誕生し,国内ではNTTドコモが「iモード」のサービスを開始した時期である。これら,現在では不可欠になっている企業やサービスの登場が10年前だったことが象徴するように,「今後のIT戦略を定めるうえでは,10年単位の視点が必要である」とした。

 では,今後の10年単位で踏まえておくべき視点とは何だろうか。ここで程社長は,「エラスティック(伸縮性)経営」「クラウド(LとR)」など,七つのキーワードを提示した。前者のエラスティック経営は,短期間で訪れる好不況の波に応じて規模を柔軟に拡張・縮小する,変化対応力の強い経営体制を指す。

 このエラスティック経営を実現するためには,それを支えるIT基盤も変化しなければならないという。従来のように自社専用のシステムを時間をかけて開発する体制に固執していると,経営側が求める変化に追いつかなくなるからだ。

 そこで重要になる概念が,クラウド(LとR)である。つまり,外部のITサービスを利用することで,利用範囲を柔軟に拡張・縮小できる「クラウド(cLoud)・コンピューティング」と,インターネット経由で外部の知的労働力を低コストで調達する「クラウドソーシング(cRowdsourcing)」という二つクラウドを活用するわけだ。LとRのいずれのクラウドも,必要に応じて外部の力を柔軟に取り込むところがポイントである。

 その一方で,重要性が高い基幹システムなどは,今後も社内システムとして残ることは間違いない。従って既存の社内IT基盤と,クラウド(LとR)に象徴される外部リソースをいかに組み合わせられるか。これが企業のIT競争力の鍵を握る。だからこそ程社長は,「IT部門はプロデューサーになる必要がある」と説くわけだ。

 「社内に閉じるのではなく,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)など一般消費者向けを含む外部のITサービスに目を向けてほしい」と訴え,講演を締めくくった。