独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は2009年10月23日,「2009年度日本OSS貢献者賞」の受賞者を発表した。日本OSS貢献者賞として初めての女性,ドキュメント整備への貢献者が選ばれた。新設の奨励賞には高校生を含む若手のほか,団体として工業高等の技術科や地域コミュニティが受賞した。

 2009年度日本OSS貢献者賞の受賞者は小崎資広氏,瀧田佐登子氏,フェルナンド ルイス・バスケス カオ(Fernando Luis Vazquez Cao)氏,本田茂弘氏の4名。

 小崎氏はメモリー管理を大幅に改善するなどLinuxカーネルの開発に大きく貢献した技術者。カーネルへの貢献に加えKernel Watchなどの執筆活動,セキュリティ&プログラミングキャンプでの学生の指導やコミュニティ活動が評価された。

 瀧田氏は非営利の公益法人Mozilla Japanの代表理事として,Firefoxなどのオープンソース・ソフトウエア普及活動を推進。OSSをベースとした人材育成に取り組んでいるほか,瀧田氏の作り上げた基盤をベースに多くのコミュニティ・メンバーが開発,普及に活躍していることが評価された。

 ルイス・バスケス カオ氏はLinuxカーネルに標準採用された「カーネルクラッシュダンプ」や「ディスクI/O 制御/仮想化」などの開発に携わった。仮想化環境でゲストOSの入出力の制御を可能にする機能も提案した。

 本田氏はPostgreSQLの日本語ドキュメント整備を精力的に行っており,日本におけるPostgreSQLの普及に大きく貢献した。「ドキュメント整備による貢献を続ける姿は,コミュニティにおける一つのロールモデル(模範)といえる」(受賞理由)。

 今回から新設された「日本OSS奨励賞」は,若手やグループを対象とした賞。

 新井紀子氏は教育用ポータル向けCMS「NetCommons」を開発し,2005年にOSSとして公開した。2008年と2009年のユーザー・カンファレンスには400名以上が参加するなど普及が進んでいる。

 安藤祐介氏はWebアプリケーション開発フレームワークCakePHPの普及に貢献した。日本のコミュニティの活動を海外にも認知させ相互交流を推進している。

 新藤愛大氏は2007年にFlashやFlex,ActionScriptのためのオープンソースリポジトリSpark projectを立ち上げ「オープンソース文化が根付いていなかった日本のFlashコミュニティにも,ソース公開の重要性と楽しさを広めた」(受賞理由)。

 高木正弘氏はPHPマニュアル翻訳プロジェクトで日本語ドキュメントを整備,PHPの普及に貢献した。PHPのフレームワークであるZend Frameworkのマニュアル翻訳にも参加。「多くのユーザが恩恵を受けている」(受賞理由)。

 寺島広大氏はオープンソースの運用監視ソフトウェアZABBIXの日本コミュニティZABBIX-JPの代表。2005年8月にZABBIX-JPを開設,日本語ドキュメントの公開や掲示板の運用を行い,ZABBIXの普及に貢献した。

 林拓人氏は現役の高校生。独学でプログラミング言語CyanやYellowを開発し公開。U20プログラミングコンテストで経済産業大臣表彰も受けている。2009年のセキュリティ&プログラミングキャンプではRubyの,ある動作を最大50%高速化する改良を行い,Ruby本体に取り込まれている(関連記事)。

 団体部門では山形県立寒河江工業高等学校 情報技術科とLOCALが受賞した。

 寒河江工業高校 情報技術科はオープンソース・ソフトウエアを活用し,情報活用の本質を理解させることを狙った授業を行っている。Linux技術者認定試験LPIの合格者を輩出するなど,生徒の技術力を向上させている。

 LOCALは北海道で活動するコミュニティ。オープンソースカンファレンスHokkaidoの現地実行委員会など技術系地域コミュニティの活動を支援し「その活動が他の地域に波及しはじめるなど,地域内外で高い評価を得ている」(受賞理由)。

 授賞式は10月29日,IPA Forum 2009のオープンソフトウェア・セッションで行う。

■変更履歴
11段落めで「木正弘氏」となっていましたが,正しくは「高木正弘氏」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2009/10/24 12:35]