シスコシステムズは2009年10月21日,サービス統合型ルーター「Cisco ISR G2」を発売した。企業の支社,支店などブランチオフィスに向けた製品である。現行世代から性能強化を図ったほか,WAN高速化,無線LAN管理,トラフィック分析といったサービスを必要になったときに追加して動かせる機能を追加。テレビ会議などのビデオ機能も強化している。
本体性能は,マルチコアのネットワーク・プロセッサを搭載し,高速なモジュール間通信を実現している。テレビ会議などビデオ・アプリケーションに対応し,従来よりも高い音声(電話)処理能力を持つDSP(digital signal processor)モジュール「PVDM3 DSP」を使える。消費電力の削減やEnergy Wiseによる電力管理が可能である。
OSはCisco IOS リリース15.0(1)M。オプション機能をあらかじめ搭載し,必要に応じてライセンス・キーを入力すれば使える「ユニバーサル・イメージ」方式を採用している。設定用には,新たにUSBコンソールに対応した。
新機能の目玉は「Services Ready Engine」(SRE)の採用である。ISR G2にサーバー・モジュール(SREサービスモジュール)を取り付け,その上でネットワーク・サービスやアプリケーションなどを動かせる。ISR G2を導入した後からでも,サービスを遠隔から導入できる。利用企業は,サービス展開のコストとスピードで,メリットを得られる。
SREで動くサービスは,シスコとサードパーティから提供される。シスコはネットワークおよびセキュリティ関連のサービスとソフトウエアを提供する。WAN高速化,無線LAN管理,トラフィック分析,IPS(侵入防止システム)がある。将来は一定時間までのビデオ・レコーディングをサポートする予定だ。コラボレーションの分野では,シスコがボイス・メールとIVR,パートナが通話録音サーバーを用意している。サードパーティ製では今後,仮想化あるいはいくつかのWindowsサーバーの機能をマージすることを考えている。SREエンジンに仮想化技術まで搭載されると,単一のSREエンジンで複数のサービスを動かせるようになる。「ネットワークの複雑性を増加させることなく,多種多様なサービスを提供できる」(プロダクトマネージメント ボーダレス ネットワーク担当の大木 聡シニア マネージャ,写真1)。
ISR G2は「Cisco3900シリーズ」(写真2),「Cisco 2900シリーズ」(写真3),「Cisco1900シリーズ」(写真4)がある。このうち2900シリーズと3900シリーズは発売済み,1900シリーズは11月発売予定。グローバルの参考価格は,1900シリーズが1595米ドルから,2900シリーズが1995米ドルから,3900シリーズが9500米ドルから。オプションは,SREサービスモジュールは1000米ドルから。DSPモジュールのPVDM3は800米ドルから。
支社や支店で「ボーダレス ネットワーク」を実現
ISR G2と並んで,新しい企業ネットワークのコンセプト「シスコ ボーダレス ネットワーク」も発表された。“いつでも,どこでも,誰でも,どんなデバイスでも安全に,高い信頼性で,シームレスにサービスやアプリケーションを迅速に提供できる次世代アーキテクチャ”を指すというもの。
今後シスコは,段階的にボーダレス ネットワークを実現する製品を投入していく。その第1弾としてシスコはブランチ(支店,支社)向けを挙げており,ISR G2はそのキー・コンポーネントとなる製品である。
同社のエンタープライズ マーケティングの北川 裕康シニア マネージャ(写真5)は,「ブランチは営業拠点,サービス拠点であり,顧客や取引先への最前線となるため重要なポイント。戦略的な場所なので,そこのエクスペリエンスを向上させることは価値がある」と説明した。
なお,今回発表したCisco 3900/2900/1900シリーズはいずれも,エンタープライズICTの総合展「ITpro EXPO 2009」(10月28日~30日,東京ビッグサイト)の特設コーナー「ネットワーク最前線」の同社ブースにて展示される予定。
本文の冒頭で発売の日付を2009年10月20日としていましたが,正しくは2009年10月21日です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2009/10/21 20:55]