写真1●ITU TELECOMのフォーラムに登壇したNTTの三浦惺社長
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写真2●フォーラムには各国の政府担当者も出席
写真2●フォーラムには各国の政府担当者も出席
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 スイスのジュネーブで開催中の「ITU TELECOM WORLD 2009」で2009年10月6日,NTTの三浦惺社長が「社会インフラを変革するインフラとしてのICT」というフォーラムに登壇し,日本におけるNTTグループの取り組みと,ICTによる社会や経済への貢献について紹介した(写真1)。

 三浦社長は,NTTグループが日本で光ファイバやLTE(long term evolution)などのインフラを用いて,IPベースのユビキタス・ブロードバンド・サービスの提供を進めている取り組みを紹介した。例えば,「モバイル・バンキングのようなサービスが新たな社会インフラを作り,家庭内の機器をネットワークで結ぶホームICTが個人の生活をより快適にするだろう」(三浦社長)と,ICTが果たす新たな社会への貢献を語った。

 フォーラムにはカナダの産業省の副大臣補佐官であるヘレン・マクドナルド氏,米国大使で国務省の国際通信と情報政策の調整官であるフィリップ・バーバー氏,メキシコの通信担当の首席補佐官であるパスカル・アルバ氏といった,各国の政府担当者も登壇(写真2)。経済危機の中,各国で政府が率先し,ブロードバンド・インフラやICTを使った健康分野などへの応用に公共投資を進めている実態を紹介した。米国大使のバーバー氏が「公共投資なしでブロードバンド環境を国全体に広げることは多くの国で不可能」と語るように,各国ではICT分野での政府の役割が増しつつある形だ。

 この点について,NTTの三浦社長は「政府の役割は国によって違ってくる」という認識を示した。日本では,ほとんどの家庭をカバーするところまでブロードバンドの普及が進んでおり,これから国全体にブロードバンドを普及させようという他国と同じ状況ではないという主張だ。三浦社長は,「FTTHを見ても日本の9割近いエリアまで敷設できている。残りの1割を政府と自治体が協力してデジタル・デバイドを解消する」と語り,日本と他国との違いを強調した。

 最後に三浦社長は,ITU TELECOMの大きなテーマの一つになっている環境問題について触れた。ICTによるCO2削減に関しては,テレビ会議の利用などによってCO2の発生を抑えられる一方で「データ・センターの利用が増えることでCO2の発生を増やす側面があることを忘れてはならない」(三浦社長)と強調した。さらに,NTTグループは空調設備や仮想化技術の活用に加えて,「(電気信号に変換せず光のままルーティングできる)光ルーターの開発によってCO2削減に貢献していきたい」(同)と述べ,各国の担当者がスマート・グリッドなどエネルギー管理によるCO2削減の方向性を見せる中で,研究機関を持つ通信事業者ならではの意見を示した。