重要な欠陥にならなかった「不備」で最も多かったのはIT統制関連,内部統制報告書の作成期間は決算日から平均67日---日本監査役協会はJ-SOX(日本版SOX法)適用初年度に関する調査結果を公表した。3月,4月,5月決算の上場している会員会社を対象に,インターネットを利用して2009年8月17日から9月4日にかけて調査。1159社から回答を得た。

 J-SOX適用初年度の経営者評価が「重要な欠陥があり,内部統制が有効でない」となった18社を除く企業に対し,重要な欠陥に至らなかった「不備」の内容を尋ねたところ,最も多かったのは「IT統制など」で35.9%。「日常の経理手続など」(33.5%),「決算手続など」(26.5%)がこれに続く。

 回答企業はIT統制における不備の例として,「ウイルス対策ソフトの装備について,一部の会社所有パソコンがチェック対象から漏れていた」「インタフェース・アプリケーションのアクセス制限がなされていない」などを挙げた。

 重要な欠陥に至らなかった不備のうち,40.9%は「決算・財務報告」プロセス,38.9%は「決算・財務報告以外の重要な」プロセスに含まれていた。重要な欠陥に至らなかった理由としては,「金額的重要性が低い」(38.9%)と「補完統制があるため,虚偽表示の発生可能性や金額的影響が低い」(37.8%)が多かった。

 一方,「重要な欠陥があり,内部統制が有効でない」となった18社を対象に重要な欠陥の内容を尋ねたところ,「決算手続など」が55.6%と過半数を占めた。「人員の能力など」(38.9%)が続く。「IT統制など」を挙げた企業はなかった。

 各社は内部統制報告書の作成にどれだけの時間をかけたのか。調査結果では,内部統制報告書のドラフト作成に決算日から平均48日,実質的な作成に同平均67日を費やした。

 監査役会が内部統制報告書のドラフトを入手した時期は「監査役会監査報告の作成時まで」が29.6%と最も多かった。「株主総会の開催日まで」が14.7%あったほか,3.1%は「ドラフトは作成されなかった」と答えた。監査役会が内部統制報告書を入手した時期は「株主総会の開催日まで」が39.1%と最も多かった。

 株主総会では,経営者または監査役がJ-SOXについて口頭で説明も報告もしなかった企業が63.4%。株主総会で,株主からJ-SOXについて質問が出たのも1.6%だった。多くの企業では,J-SOXについて説明も質問もなかったことになる。

 今年4月から始まった2009年度における監査報酬は,「2400万円以上3200万円未満」が21.3%で最も多い。監査報酬は会社法監査報酬と,内部統制監査および四半期レビューを含む金融証券取引法監査報酬を合わせた金額である。前年度と比べると「減少」が42.5%,「同額」が31.7%だった。

 監査時間(会社法監査時間と金融証券取引法監査時間の合計)は「1600時間以上2400時間未満」(26.8%)が最も多い。前年度と比べ,「減少」すると見ている企業は56.8%。内部統制監査の監査時間については,23.8%が「前年比20%以上減少」と回答した。