米アドビシステムズは米国時間2009年10月5~7日に,プライベートカンファレンス,Adobe MAX 2009を米ロサンゼルスで開催(写真1,写真2)。初日の基調講演ではコンテンツが牽引する新しいメディア市場の姿を,同社が開発した技術を通して紹介した。
オープニングではアドビシステムズCEOのシャンタヌ・ナラヤン氏が登場。コンテンツを表示する新しいデバイスの登場によって,DTP,インタラクティビティ,コンテンツといったメディア3要素の基本的な構成が変わると述べ「今後,単なるコンテンツはコンテンツとアプリケーションへ,単なるクリエーションはクリエーションとオプティマイゼーションへと変化する。アイディアと情報がよい作用を及ぼし合う環境を革新したい」と,コンテンツ市場のトレンドを分析しながら抱負を語った。
コンテンツ自らが効果を測定して報告
続いて最高技術責任者のケビン・リンチ氏が登壇。アドビのエコシステムでは製品やサービスを導入した後の効果測定が欠けており,この点が今後の課題であると述べた。この話題を受け,9月15日にアドビが買収を発表したオムニチュアのCEO,ジャシュ・ジェイムズ氏が登場し,アドビにおけるオムニチュアの役割を話した。
もともとウェブ制作会社だったオムニチュアは,サイトを作ったあとの顧客の利益を上げるための方法を常に気にしていたという。現在同社のコアコンピダンスであるリサーチ技術を確立したのも,「サイトの効果測定をしてより顧客の利益につながるようなコンテンツを配信しようと考えたから」(ジェイムズ氏)。
オムニチュアの分析技術は,今後アドビが製品群に組み込んで活用する予定だ。具体的には,アドビの製品で作成したウェブページやデジタルアセットといったコンテンツそのものが,特別な後処理なしに測定済みの効果をコンテンツホルダーにレポートするような仕組みが考えられるという。アドビによるオムニチュアの買収は11月末をめどに完了する見通しだ。
さらに講演では,マルチスクリーンによるコンテンツとアプリケーションの流通を実現させる一連の技術として「Adobe Flash Platform」を紹介。本プラットフォームは,ツールとフレームワーク,サーバーとサービス,クライアントの5グループで構成される。各グループにマッピングされた製品名から,ソフトウエアの用途がわかる。
Flash Player 10.1がスマートフォン・ブラウザに対応
プラットフォームの中で今回アップデートが発表された主要製品は,Flash Player 10.1とAdobe AIR 2.0。Flash Player 10.1は新しく,各種スマートフォンに組み込まれたブラウザに対応する。これに伴い,マルチタッチ操作やスクリーンの回転動作に対応するほか,自動的にメモリーや電力の消費を軽減する機能や,HTTPによるビデオのストリーミングに対応。スマートフォン上で求められる要件に配慮して最適化した。メモリーと電力の消費に関する機能は,米クアルコム社のSnapdragonチップセットに最適化されている。
リンチ氏は,各種スマートフォンでFlash Player 10.1向けコンテンツがどう動くかデモを披露した。最初に世界的なシェアではトップのノキア製端末(写真3),次にSnapdragonを搭載した東芝製のWindows Mobile,3番目は実機の種類を伏せた状態で登場したオープンソースのAndroid端末(写真4),最後にWebOS搭載のPalm PREでのFlashコンテンツの動作を紹介。ムービーをダブルクリックしてランドスケープに変更すると,自動的に全画面で再生する様子などを見せた。Flashに対応した端末は2010年から順次発売される見通しだ。ほかに,マルチタッチ検出機能のあるディスプレイでのデモも実施した(写真5)