写真1●クライアント管理/データ保護をSaaS提供する「Computrace」のサービス概要
写真1●クライアント管理/データ保護をSaaS提供する「Computrace」のサービス概要
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 カナダAbsolute Software Corporationは2009年9月30日,クライアント管理/データ保護サービス「Computrace」日本語版を発表した。パソコンのBIOSおよびOS上に搭載したエージェント・ソフトがAbsoluteの管理サーバーと随時通信することで,資産管理やデータ消去,端末ロックなどの機能を実現する(写真1)。同日から出荷開始する。

 Computrace日本語版の主な機能は,(1)資産管理,(2)遠隔管理,(3)回収サービスの三つ。いずれもインターネット上の管理サーバーに対して通常時は1日1回,紛失・盗難時は15分に1回の頻度で,対象端末の状態を送信する。

 (1)の資産管理はハードウエア/ソフトウエアの構成情報を管理する一般的なもの。(2)の遠隔管理では,データ消去,およびIntel vProと連携した端末の起動制限などの機能が利用できる。

 特徴的なのは(3)の回収サービス。ユーザーが紛失・盗難を管理サイトに報告すると,エージェント・ソフトによるキーロギングや画面キャプチャ,内蔵カメラによる撮影などの機能が有効になり,回収作業チームが通報に必要な情報を収集。Absoluteの現地法人が警察などへ届け出る。このほか無線LANやGPSによる位置情報を報告する機能も備えるが,日本語版では未対応という。

エージェントは主要な企業向けPCのBIOSに組み込み済み

 Computraceのエージェントは,富士通やパナソニック,米Hewlett-Packard,米Dellなど主要パソコン・メーカーの企業向けパソコンのBIOSに組み込まれた状態で出荷される(機種によってはBIOS更新により個別対応)。ユーザー企業は,Absoluteの管理サービスを年間契約した上で管理画面のIDとパスワードを入手し,OS用エージェントをダウンロードして使う。対応OSは,Windows 2000/XP/Vista/7,Windows Server 2003/2008,Mac OS X v10.3以降。

 日本語版の提供開始に当たって,アジア地域に拠点を開設。警察OBなどからなる回収作業チームのオフィスをシンガポールに設置したほか,日本法人を近日立ち上げる予定だ。販売はシステム・インテグレータやセキュリティ・コンサルタントなどを通じたチャネル販売が基本だが,当面は同社日本語サイト経由の直販を受け付ける。

 料金は現時点では未定。1~5年の年額課金で,「一般的な資産管理サービスと同等の月額数百円のレベル」(Absolute Software日本代表の田北幸治氏)に設定するという。なお回収サービス利用時の追加料金は発生しない。

 同種の遠隔管理ソリューションは,モバイル・ブロードバンドの普及に応じて通信事業者などが提供を始めている(関連記事)。これらと比べ,パソコン・メーカーとのOEM契約でBIOSエージェントの生存性を高めている点,紛失・盗難時の回収サービスを追加費用なしで利用できる点が,Absolute Softwareのサービスにおける差異化のポイントとなっている。とはいえハードディスクを抜き取られるなどの不正行為には対処できないため「あくまで複数層あるセキュリティ対策の一つ」(Global Corporate DevelopmentのWilliam Pound副社長)という位置付けになる。

 1993年設立のAbsolute Softwareは,2005年から欧米を中心にBIOS組み込み型の資産管理・データ保護ソリューションを提供してきた。「全世界で400万台がAbsoluteの管理サーバーに利用状況を報告するアクティブ・ユーザー端末」(Pound副社長)という。